Past 2



旅に憧れる。
目の前の生活には満足できずいつも遠くばかり見ている。
その場での生活にひたむきに没頭できる誰かをいつもうらやましく思う。
彼らもそう言われれば、違うと持論を持ち出すのだろう。
何者でも無い事は辛いだろう。しかし何者かでありその世界で生きていても、本当になりたい自分までの距離があればあるほどそれもまた辛い。
そんな中で、時折瞬間的に理想にリンクし、そこで呼吸出来る事を知り、
その本当を確かめられた時、
それは中毒的な快感と確認になり、
また少しだけ夢を見て歩く行為の源動力になる。
少なくとも今まではそうであった。

しかし現実には生ビールを頼めば「あいよっ」っと目の前のカウンターに出てくるほど簡単ではない事はわかっているつもりだ。
焼き鳥のくしに大根のお浸し、
話し相手が美人というのは、すっぽんが空をみて思う事と同じなのだろうか?

花火は上がり月夜を照らしそして必ず消えてゆく。

僕は10年来ファッションモデルを生業としてきた。聞こえはいいかもしれない。確かに数時間で一般サラリーマンの月収を稼ぐ事もある。
その日初めて会った美しい女性と3時間後に結婚式を挙げることもあるし、
サッカー選手ーや宇宙飛行士にもなりえる。
瞬間的に輝きファインダーの中に納まる。
そしてその次の約束はない。
それが僕らだ。

この仕事を始めた10代のころあるカメラマンは僕に尋ねた
「なんでモデルなんてやるんだ?」
「、、発言権が、欲しいからです。。」
「それなら物書きになりなさい」

モデルであり続ける為にそれなりのものを犠牲にした。
真夏の建築工事現場で荷を降ろし、
冬には雪が降る廃棄物処理場でクレーンでは仕分け不可能な廃材を手作業で仕分る。
その翌日に有名デザイナーの来日コレクションのオーデションに向かい
オートクチュールを身に纏う

17で殺された嘗ての恋人は何も語らなかった。

彼女の母親は死人に口なしと何度もぼくらにつぶやいた
彼女の父親は長年勤めた市役所の仕事を早期退職した
真実を述べると誓った男は嘘をつき裁判は何もわからないまま結審した

そんなこんなで今僕は文章を書くことに辿り着く。
生ビールと美人、夏の花火は叶うだろうか?
すっぽんの生き血はりんごジュースで割り、その肉や甲羅を煮込んだ鍋は旨い
焼き鳥屋の雇われ主人になった仲間は語り教えてくれた。

結婚し離婚しまた結婚をする。11年とはそんな年月で
僕らは平等に年をとり28になった



回り道もなかなか悪くなかった














text by sotaro ohdake
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