最後のともだち

立川発新宿行き
土曜の22時代という事も相まって乗客のすくない中央線
兄貴からもらったmacbookから記事を書いています

今日は友人Yについて

普段は滅多に立ち寄らない立川での野暮用
この街に住むモデル時代の友人Yと久しぶりに会う事にした

彼は僕が以前所属していたモデル事務所に3ヶ月遅れで入った
1つ年下の後輩
オーデションの受け方やウオーキングの指導まで
面倒を見る事を当時のマネージャから命じられた

最初はつかめない男だったが
苦楽をともにするうちに彼の魅力に引き込まれていった

彼は純粋な心を持つ純粋な馬鹿で
片親なのに母親が苦労して入れた高大一貫教育の私学を
たった150円のジュースを万引きしてして一発退学になるほどの奇跡の男だ

他にも買ったばかりのスポーツバイクを一週間んで廃車にし
記憶を喪失生死をさまよったり
彼にまつわる伝説は語り尽くせない

モデル業でもその引きは相当強く
何度ベタなオーデションを受けても箸にも棒にもひっからない始末
ところが事務所内で彼の首が(強制引退の勧告が)ちらつき始めると
いきなりヴィトンのショウを勝ち取ったりする

まさに予想のつかない一発屋、というか
二回の裏、満塁ホームラン男


彼は彼より後輩のモデルたちに馬鹿にされるようにいじられてもあまり気にする様子を見せず、
一緒になって笑ったりしていた



演技学校で出会った彼女と結婚する事が決まり
二浪二ダブの結果何とか大学を卒業
卒業試験をギリギリクリアし誰もが知る優良企業に就職した


彼と彼女の間に新しい命が授かりモデル卒業が間近に迫った2010年2月
僕とyは思いで作りにタイへと旅立った

喧嘩もしたり行き違いもあったが最高の旅だった
象にまたがり山を行く
タンクトップにノーヘルでバイクを走らせる
暖かい風が全身の毛穴を開かせた

彼がへたくそな英語で旅人と言葉をかわした様子を
僕はまるで昨日のように覚えている

彼の白目は
まるで生まれたての子供のように透き通っていて
茶色がかかった黒目は好奇心と優しさに満ちていた

現在、彼は2児の子宝に恵まれ
3年目の会社での仕事も楽しくなってきたと
そして休みの日は子供や奥さん家族との時間が楽しいのだと
また、目をキラキラ輝かせながら話してくれた

ブルータスにのってた村淳の父親論がやばくて共鳴したんですよ
西岡って言う日本人ボクサーが今凄いんですよ

ノンアルコールビールを飲みながら語ってくれた

彼がバイクで家路につくのを見送ると
僕は一人になり急に寂しくなったが
直後に、これでいいのだ、と
言葉通り、まるでバカボンのパパの様な事を思ったのだった


中央線各駅停車は規則正しく進み僕が以前ここちよく住んでた阿佐ヶ谷駅を通過する

彼と彼の奥さん2人のエンジェルが住む街立川駅からはドンドン遠ざかっていく


スタンンドバイミーじゃないけど
もう、純粋な意味での、ともだちをつくる事はなかなか出来ないだろう
あり得ると思っていた男女の友情も今はもう求めない

僕は彼のようには生きられないけど
彼のようにいつか素敵な奥さんとの間に子供を持ち
素敵な家族を持ちたいと思う

そして15年後いや25年後でもいい
僕はまたyと2人で旅がしたい

あいにくというか、さいわいというか
僕にも彼にも深酒をあおりながら紐解く様な複雑な困難は今はない

ただまた近いうちに改め会い、酒を飲み交わし
お互いを確認したいと思った

中央線は新宿駅に到着
飽和状態の人とそれぞれの会話や服装

許容をこえた人並みに飲み込まれても
今日はまだ、なつかし気持ちを保つ事ができた