これは不言流の射の写真です。
矢筈が肩と肘の間(離れてから約50センチの位置)に見えます。
弓の変形による弦への力の伝播が非常に速いため、力が刻々と伝わるので上弦は曲線を描いています。
上弦の上部が比較的はっきりと見えているのに対して下部がかすれて見えるのは、下部の弦の方がより速く的方向に移動しているからです。
また、下弦はその下部付近しか見えませんが、その延長線の近くに矢筈があります。
下弦の上の大部分が見えないのは、上弦の下部と同様に的方向に速く移動しているからです。
上弦が曲線なのに対し下弦が直線的なのは、下弦(下鉾)の方が短く力の向きと弦の移動方向が比較的に近いからです。
この状態では2枚目の写真の様に曲線の向きが変わっていないので、まだ弦が矢を加速している様に判断できます。
下の写真は上弦の曲線が上の写真とは反対向きで、矢の加速は既に終わり、矢が弦を引っ張っている様子が分かります。
弓は、会の状態で弓力が最も大きいわけですから、離れれば時間が経つほど矢を加速する力は弱まります。
しかし、矢にも弦にも慣性力が働くので、最大の加速度であってもその瞬間だけの加速では十分な初速度は得られません。
矢がトップスピードに達するには一定の加速距離を要します。
カーレースのスタートを思い出してください。
アクセルを底まで踏んでいて、スタートと同時にタイヤを高速で回し始めます。
路面との接触ですごい煙です。
この場合でも、トップスピードに達するには、一定の加速距離が必要です。
自動車に慣性力が働いているからですね。
この時、すごい煙が出るのは、タイヤが空回りして路面との間で摩擦するからです。
このタイヤの空回りはエネルギーの大変な無駄使いです。。
もし、タイヤに空回りを防ぐスパイクでも付いていたら、もっと短距離でトップスピードに達します。・・・ただし、路面が荒れてしまいますね。
弓の場合、射出エネルギーの無駄使いに当たるのが、上鉾の戻りや矢の並進運動などですね。
離れと同時に上鉾が戻り始めると、上鉾が上弦を介して矢筈を引く張力が急激に減少して、弦離れから20から25センチ矢が進行した時点で、矢の加速は終わってしまいます。
ビニールのゴミ袋を膨らませて、弓手より少し的側に置き、離れた時に弓の下部が当たれば、これに該当します。
矢離れの初期には上下の両弦で、つまり合力で矢を加速していたのが、上鉾が戻ると上弦の加速能力が急激に減少するので、下弦だけの加速になってしまい、既にその加速は矢の速度を上げる事が出来なくなります。
沢山の事例で確認しましたが、弦離れすると矢筈は脇正面へ振れ、そこから揺れ戻って体側へ振れて
、更に脇正面側へ振れながら矢離れをします。
例えば、上から見た時、会で矢枕から弦枕まで100cmあるとすると、離れ初めの矢の進行25センチで矢筈は外側に振れ、そこから次の25センチで矢筋に戻り、更に次の25センチで体側に振れ、そこから外側に揺れ戻しながら矢離れをします。
これが、ほとんどの射手の在り様です。
また、前離れや弓手の緩みなどで離れれば、矢は並進運動を起こし、矢軸が曲がり蛇行するように飛びます。
この場合も、弦による加速が矢軸の曲がりに吸収されて、射出エネルギーの大きなロスになります。
巻き藁に刺さった矢の筈が左右や上下に振動したり、円運動をしていればこれに該当します。
上の写真に比べて、下の方は弦離れして矢の進行が短い距離で加速が終了しています。
矢筈が左肩を過ぎた辺りで既に矢が弦を引っ張っていますね。
この射では上鉾が戻っているので、弦にも的方向の速度がのらないので、くっきりと弦が観察できます。
それで、不言流の弦離れには雑味が無い様が見事な曲線に表れています。
弦離れ後の弦の写真もたくさんネット上で見てきましたが、みなグニャグニャの状態でした。
また、前離れ、緩み、弓手による振りなどで起こる矢の並進運動と矢軸のうねりの無い事が、矢軸がはっきりと見えてカスレの無い事から確かめられます。