寒さも厳しく、雪の振り積む中で、一定の射を行うのは中々難しいことです。
それでも、全45射の実験の内、採取できた22射のデータを見ると、複数の強い相関関係が見られるので、対照実験として変える条件以外はほぼ一定の射が行われていたようです。

こうして得られた実験データとそこから導かれる法則性は私の射に於けるものです。
つまり、一般の射手と比べて特に異なる特性、いずれの場合の離れでも弓手首が大きく上へ押し曲げられない、ということです。
そうした射の場合には、この研究が直接役立つものと思います。

尚、不足した実験の一部をやって、一応の実験を終えました。

実験結果から言えること
1、弓手拳の状態を中押しにし、馬手肘の高さを3段階に変えた場合、矢飛びに軽い差異が見られます。
会での馬手肘が高いほど、矢軸は下向きで重心の移動方向は更に少し下となる。
馬手肘が低いほど、矢軸は僅かに上向きで重心は更に僅かに上向きとなる。
馬手肘が中位の時、矢軸は水平に飛び出し重心の移動方向と一致している。

2、弓手拳の状態を上押しとした場合、馬手肘の高さによる差異より大きな影響を及ぼす。
この場合で馬手肘の位置が高い場合は、この9種の組み合わせのうちで最も矢軸が下向きで、その重心はより下に移動する。
馬手肘が中位の時は、矢軸は下向きで、その重心は更にやや下向きである。
馬手肘が下の位置の場合は、矢軸は水平に飛び出し、重心の移動方向とも一致している。
ただし、この場合は、上押しの程度が馬手肘と対応している必要があり、矢所は上下に散らばる危惧がある。

3、弓手拳をベタ押しの状態にした場合、上押しに比べると上下方向への影響力は遥かに小さく、馬手肘の高さよりも影響力が弱い。
弓手がベタで、馬手肘を低くした場合、矢は僅かに上へ飛び出し、矢軸の傾きと重心の移動方向も、ほぼ同じだった。
同様に、馬手肘の高さが中位の時、矢は水平に飛び出し、その重心の移動方向とも一致していた。
また、この時、最も矢勢が乗っていた。
同様に、馬手肘を高くした場合、矢は僅かに下向きに飛び出し、その向きと矢軸の傾きや重心が一致していた。

それでは、この9種類の組み合わせの中で、どれが最も好ましいか。

条件としては、矢筋通りに水平に飛び出し、矢軸の向きも重心の移動方向も一致しているものです。
ア、中押しと中位の右肘
イ、上押しと下位の右肘・・・上押しの程度によって矢が上下に散る。
ウ、ベタ押しと中位の右肘・・・最も矢勢が乗る。

これら3つの組み合わせの内、ウの場合が1番矢勢が乗り、唯一ベタ押しの場合は右肘の高さに関わらず、矢の傾きとその重心の移動方向が一致しており、最も安定し、矢勢も乗る弓手の在り様だということが分かりました。

アについて、弓力を受けるのが中押しで中位なら馬手肘の中位が、弓力の支えとしてはバランスが好いのだと思います。
この組み合わせの再現性は最も高いと思います。

イについて、互いの影響を相殺するバランスが微妙ですが、上押しによる矢勢を狙うのなら、有効な方法です。

ウについて、離れの弓力に手首が負けない場合は、内竹面に接する拇指球が広範囲である為、馬手肘の上下の広い範囲に亘ってバランスの好い状況を齎(もたら)すのでしょう。
また、弓手首が負けないのであれば、中押しよりもベタ押しの方がより良く弓力をしっかりと受け止める構えなのだと、思います。

1年ほど前の私は上押しのイを実施し、矢勢の上乗せを図っていました。
その後から最近まではアを実施し、射の精密性と再現性の高さを求めていました。
さて、これからはウを実施して、射の精密性と再現性を図り、そして手首の負けないベタ押しによる弓力の支えで矢勢の乗りを図ると同時に、ベタ押しでも上押しを利かせます。

それぞれの時期でこの方法が好いとしていた組み合わせが、今回のような実験から俯瞰的に眺められるようになりました。
そして、各々の時期の射術の在り方に正当性の有る事が明らかになりました。

また、新たな目標・ベタ押しの射が浮かび上がってきたことも、大きな成果です。