個室に移ってから、昼も夜も一緒に過ごした。


あぁ~と声を出すたびに話し掛けてみるが、視線もどこかうつろで。。。

もう…痛いと言う事もできないんだ。

もしかしたら痛みがあるのか…とマッサージしたりしてみたが。。。

足もかなり細くなってしまった…。


夜中じゅう声を出しすぎて枯れてきた。


水を飲ませてあげたかったが、水分をあげると、器官に入ってしまうとの事で、口の中に水分を含めた脱脂綿のようなものを入れると血だらけになった。

口の中が真っ赤だった。


もう…リンゴもあげられない。


何も食べられず、喋る事もできず…。
そんな状態は生きてるといえるのか?


生きるとは何か?

そんな疑問がわいてしまった。


私に何かを学ばせるのが、母の生きている最後の役目なのだろうと思った。


母の髪の毛が抜け落ちた頭をなで、母の身体をさすり抱きしめる事しかできなかった。

でも、そうせずにはいられなかった。


お母さん。ありがとね。

何度も何度も耳元でそう伝えた。



夜中に自分のこれからを考え、手帳に書き出した。


何があっても笑顔を忘れずに過ごそう。
母のように病気になった人の役に立てる事をしよう。


そして、母が病気になって教えてくれた事から学び、いつか人の役に立てるようになろうと思った。


私は『生きる』=『活きる』のだと。


母は十分活きた。

このまま肉体が朽ち果てるまで頑張らなくていいんだと感じた。


お母さん。もう頑張らなくていいんだよ。


そう耳元でささやき抱きしめた。
涙が溢れ声を殺して泣き続けた。

あぁ~。と返事をしたのか分からないが声を出した母。


その次の日。


母の友人達がお見舞いに来て、私がお風呂に入るため自宅に向かった頃、母の様態が急変した。


すぐに戻ってきて!!

母の友人から連絡がきた。

病院に戻ると、呼吸が止まったままの母がいた。

あぁ~という声すら出さない。


母さん…?
母さん。。。

ドラマのように泣き叫ぶ事なんて出来なかった。

もう涙が止まらないのだ。苦しくて息もできないくらいに泣いた。


母は穏やかな顔をしていたそうだが、涙で顔など見れなかった。


どこかまだ信じられないところがあり、もしかしたら息を吹き返すのではと思ったが…。


桜が散る季節。
母は62才という若さでこの世を去った。


お母さん、本当に今までありがとね。
私を産んでくれてありがとね。
愛してるよ。