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ジューダスは雪の降りしきる地上軍拠点を歩いていた

ジューダス達はエルレインによる歴史改変を戻す為に遥か1000年前に時間移動したのだ

そこでかのソーディアンを作った天才
ハロルド・ベルセリオスの勧めによりこの地上軍拠点に留まる事になった

今はソーディアンチームのメンバーであるアトワイトとクレメンテ救出の為ハロルドが飛空挺の作成の時間が一日かかるためその暇つぶしに散歩しているのである

「・・・・・ここが天地戦争時代か」

天地戦争

かつて天と地に二分した人類の戦い
その激動の時代にいると改めて実感した

天は雲に覆われ雪が降っている
だがそれ程寒いは感じなかった

「さて・・・・どうするか」

一通り施設や地形を把握し、今は入口近くにいる

ちなみにカイルとリアラはカーレルが貸してくれた部屋にいる

ロニとナナリーも施設内にいる
ハロルドは飛空挺の作成で手が離せないだろう
必然とジューダスは一人になった
否・・・・・
「懐かしいですね~」

「呑気な事を言うなシャル」

そう
彼の背中に隠されている普段は使わない剣

ソーディアン・シャルティエ

カイル達のいる時代には全て消失されたとされる天地戦争時代の遺産

そのため普段は使用せずに会話も二人きりの時としている

「それでシャル、今回の作戦だが・・・・・」

「そうですね、史実では成功しているのですが・・・・・」

だが今はエルレインによる歴史改変が行われている
どんな邪魔が入るか予想はできない

「・・・・・邪魔が入るなら切り伏せるまでだ」

「はい!」

しかしジューダスは変わったと感じていた
カイルという少年に出会って

かつて自分が裏切り、それでも仲間と言ってくれたスタン・エルロンの息子

共に旅をしてきて両親の遺伝的性格や行動に呆れたりしたのだが今はまんざらでもない
むしろ好ましいと感じていた

自分の正体を知っても

「俺はリオンなんて男は知らない!俺の知っているのは、仲間なのは、ジューダスだ!!」

と言っていた
かつてスタンが言ったように

「俺達は仲間だろ!」

「よしこれからは友達だな♪」

「握手だ、ほら!」

と昔の記憶を掘り起こす

初めは鬱陶しいと感じていたのだが最終的にはまんざらじゃなかった
もっともそれは叶わなかったが

(今度は・・・・・)

そう考えていた時

「あの!すみません!」

ふと声をかけられた
ジューダスが振り返るとそこには軽装の鎧と武器を纏った兵士がいた
どうやら地上軍の兵士らしい

「なんだ?」

「急にすみません、あの・・・・・自分と手合わせ願いたいのです!」

と目の前の兵士が言う

「構わないが・・・・・大丈夫なのか?」

「はい!今は持ち場の交代で休みですから」

「わかった」

そのあと訓練用の木刀が手渡された
かなり真剣に近い作りなため握りやすい
ジューダスにとってはもう少し細身なほうがよかったが

「ではお願いします!えと・・・・・」

「ジューダスだ」

「ジューダスさん!自分はエルラン・ハインツと言います」

「わかった」

エルランと名乗った兵士は木刀を構えた

(見るからに基礎の構えだな・・・・・)

ジューダスはそう分析する
隙は少ないが実戦が少ないためかやや安定がない
自分にとっては楽勝な相手と感じた

「では行きます!・・・・・たぁ!」

「せぃ!」

ジューダスはその初撃をいなし反動を利用して切り付ける

「わっと!」

「まだまだ!」

さらに連撃を重ねる
見る間にエルランの体勢が崩れた

「うわっと!」

「はぁっ!」

そこにジューダスの一撃が入る
エルランの木刀は弾かれ地面に落ちた

「まだまだだな」

「やっぱり強いですね・・・・・」

エルランは落ちた木刀を拾いあげるとジューダスの元に駆け寄る

「だが悪くない動きだ、練習をしていけば良くなるかもな」

「あ、ありがとうございます!」

エルランは改まって礼を言う

「よせ、僕みたいな子供に敬語なんて使わなくてもいいだろう」

「えっとじゃあ、ありがとう」

その後二人は近くにある段差に腰掛ける
エルランは兜を外した
その姿を見たジューダスは内心驚いた

エルランの姿は肩ぐらいまての金髪に碧眼
歳は20代前半と見える
その姿はあのスタン・エルロンに似ていた

「えっとどうかした?」

「いや・・・・・なんでもない」
ジューダスはそう言い返す
そしてエルランに言った

「そういえば何故僕に手合わせを?」

「いやぁ~実はハロルド博士の機械と戦ってただろ?それ見て強いんだなと思ってさ」

敬語を使わないエルランはますますスタンに似ていた
頭をかく仕草や話すイントネーション

「そうか・・・・・」

「一体誰に教わったんだ?」

「それは・・・・・」

ジューダス・・・・・リオンの剣は、ヒューゴに教えて貰ったものだ
と言っても剣の構えから体捌きなだけで後は独学なのだが

「父に・・・・・」

「へぇ~、すごい人だな!」

「すごい・・・・・?」

そんなこと言われたのは初めてだった
あのヒューゴをすごいなどと

「あぁ!きっと強いんだろ!」

「・・・・・まぁな」

「それで、勝ったことはあるのか?」

「いや、ないな」

「そうなんだ」

その後も他愛ない話をした
ジューダスの着けている仮面や好きな物とか
適当にあしらったが

ふとジューダスは尋ねた

「お前に信じるものはあるか・・・・・?」

「なんだよ急に?」

「いや・・・・・とくには」

ん~とエルランは思案する
やがて口を開いた

「家族・・・・・かな」

「家族?」

「あぁ、今は遠くの拠点にいるけどね」

「そうなのか・・・・・」

「小さい頃に親が死んじゃって爺さんが育ててくれたんだ」

そこまで似てるのかと内心驚いていた
妹がいない違いはあるが

「だからたった一人の肉親のためにも、早くこの戦争を終わらせたくてね」

「成る程な・・・・・」

「まぁ、君みたいな少年に負けちゃうような奴だけどね」

自分で言って恥はないのかとジューダスは思ったが口にはしなかった

代わりに

「・・・・・エルラン」

「なんだい?」

かつて自分を友と言っていた男の言葉を口にした

「信じる事、信じつづけること、それが本当の強さだ」

「それは?」

「かつて、僕の事を友と呼んだ奴の言葉だ・・・・・」

「その人は?」

「いない、死んだんだ」

「あ、ゴメン・・・・・」

エルランが素直に謝罪したがジューダスは気にしなかった

「いい言葉だな!覚えておくよ」

「あぁ・・・・・」

「おぉいエルラン~!」

遠くから別の兵士が駆け寄ってきた

「ミーティングだってよ」

「わかった!じゃあジューダス、またな!」

そう言うと兜を被り兵士と一緒に兵舎のほうに走って行った

「・・・・・似ていたな」

「そうですね、スタンの先祖でしょうか?」

「わからん」

そうシャルティエと会話しながら、ラディスロウを目指し歩いていった
その途中、雪交じりの一陣の風が吹き抜けた・・・・・






そして天地戦争は集結しジューダス達は18年前に時間移動した

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「そんな私がある日、一人の少年に出会った
その少年は怪物の頭骨に黒衣と奇抜な姿をしていたが、自分は彼に手も足も出なかった
そんな彼が私に友との言葉を語ってくれた」

信じること、信じつづけること、それが本当の強さだ

「この言葉があったから私はあの最終決戦にも奮闘できたのかもしれない
そして荒れ果てた大地を直すために惜しまなかったのかもしれない
少佐という肩書きも私にとってはあまり意味はないのかもしれないが・・・・・
この言葉を教えてくれた君へ、
ありがとう
またいつかこの青空の下での再会を祈っている」

-ハイデハルベルグ国立図書館から「地上軍ユンカース隊戦記・とある少佐の記録」より抜粋-

邂逅の雪風-完-