しばらくして竹林を抜けた。
私は言葉を失った。

私のことを珍妙な格好と言った意味がわかった。

辺りを見回すと、みんな着物を着ている。

古い町並みというより、昔っぽい建物。

いくら古都だといってもおかしいことくらいわかる。

町並みをしばらく歩いていくと、こちらを向いて手を振っている人がいる。



『龍馬さん。こっちです。』

『遅かったじゃないですか。途中で斬られていたのかと思いましたよ。』


き、斬ら…!?

なんかすごいことさらっと言ったよね。

『で、そちらの娘さんは?えらく珍妙な格好をしてますね。』


…はい。すいません。

てか、また珍妙って言われた。



『道に迷ったみたいでな。寺田屋に泊まっておるというし、困っておったなら助けんわけにもいくまい。』


『そうだったんですか。おれは中岡慎太郎と申します。こちらは、坂本龍馬さんです。』



え!?坂本龍馬!?

あの歴史上人物の?

同姓同名とか?


『龍馬。遅かったな。』

奥から男の人が出てきた。

この人も腰に刀を差している。


『おう。武市すまんな。道に迷って困っておったんでな。そのままにしておけんだろう。』


『で、その女は誰なんだ?』

後ろからまた別の男の人が出てきた。

すごい顔で私のこと睨んでる。

こ、怖い。


『あの、雪村アオイといいます。助けてもらって自己紹介が遅れてすいません。』


『またえらく変わった格好をしてますね。』


『こいつ、新撰組の密偵じゃないのか?』


私のことを、ぎっと鋭く睨む。


『あ、あの…』


怖い。思わず後ずさりしてしまう。


『これ以蔵。女子には優しくしなければならんと、言うておるじゃろうが。』


『うるさい。だいたいお前はいつも甘いんだ。』


『まーまー。娘さんが困ってるじゃないですか。それに、早くしないと約束の時間に遅れちゃいますよ。』

『ふん。』

ふて腐れたように背を向けて歩いていってしまった。

やっぱり迷惑だったのかな。どうしよう。

その時、武市さんて人と目が合った。


『すまないな。本当に困ってるようだし、君のことが迷惑というわけではない。』


『いえ。助けてもらってありがとうございます。本当にどうしていいかわからなかったので…』


『では、いきましょう。』

申し訳なさそうに俯いてしまった私に、武市さんは優しく笑いかけてくれた。

少し前で龍馬さんと中岡さんも笑顔で待っていてくれる。

少しだけほっとして、私は3人の後を追った。
『こんなところで、なにをしておるんじゃ?』


振り返ると、着物を着ている男の人が立っていた。

腰には刀のようなものを差している。

戸惑ったように立ち尽くしていると、


『ん?どうした?』


『あの…その、道に迷っちゃって。』


『それはいかんな。おんしはどこからきたが?』


わっ。お兄さん方言すごい。
それに優しそうな人。いい人っぽいから大丈夫だよね。


『あの、東京からです。』


『とーきょー?』


え!?東京を知らない!?


『しかし、おまん珍妙な格好をしちょるな。』


ち、ちんみょう?それって珍しいってこと?


『それは異国の着物か?』


『異国?別にそこまで珍しくないと思いますけど。』


『あの。それより本当に東京って知らないんですか?』


『あぁ。すまんな。わしもまだまだ勉強不足じゃな。』



勉強不足で東京を知らない人なんているのかな。


『その格好で1人は危険じゃ。家まで送っていこう。』


『そんなに危険なんですか?』


『あぁ。攘夷の連中に見つかると面倒じゃからな。』


攘夷?聞いたことあるけど、何だっけ?



『あの、私旅館に泊まってるんですけど。たしか、てらだ…なんとかだったんですけど。』



『寺田屋か。わしらもそこに泊まっておる。』



『本当ですか!?』



『あぁ。じゃがちくと用事があってのう。すまんがそっちを先にすましてもよいかの?』



『はい!』



『よし。なら、さっそく行こう。』



よかった。これでなんとかみんなの所に帰れる。
そう思いながら、私は後をついていくことにした。
目が覚めた時には、鐘の音は止まっていた。
 
 
『さっきのは、何だったんだろう。』
 
 
ゆっくりと体を起こしてみるも、まだ頭はズキズキする。
 
 
『あっ!!良かった。』
 
私の手には扇がしっかりと握られていた。
どこも破れたり、壊れていないことを確認してほっとした。
 
 
 
『早くみんなのとこに戻らないと。』
 
来た道を帰ろうとした時、なにかが違うことに 気がついた。
 
 
『あれ?ここってこんな道あったっけ?』
 
たしか私は坂を下ってきたはず。
おかしいな、探すのに夢中で気がつかなかったのかな。
 
 
『でもこの社、こんなに綺麗じゃなかったはず』
 
 
たしかもっと古びた感じで…こんな鳥居もなかったよね。
不安になって辺りを見回す。
 
 
『なんで?どういうこと?さっきと同じ所じゃないの?』
 
 
一気に不安が押し寄せてきた。ここは気を失う前にいた所と同じ場所のはずだが、なにか様子が違う。
 
 
『こんなところで、なにをしておるんじゃ?』
『えっ!?』
後ろから声をかけられ、私はびっくりして振り返った。
………この出会いが私の人生を大きく変えることになる。
信じられないような出来事、出会い。
でも、こうなることも私の運命だったのかもしれない。