7月になる頃、三年生は最後の大会で
みんな気合いを入れて練習していた。
上司や俺の指導にも力が入り、
上司が部員を怒鳴りつけ、
凹む奴を俺が慰めるという図式が成立し、
みんな頑張っていた。
しかし、男子は三回戦あたりで敗れ、
三年生は涙の引退となった。
これっきりで引退なんだということになると、
下級生も涙し、正に青春そのものを俺も味合わせてもらった。
一方で女子はどんどん勝ち進み、
ついには準決勝というところまで来た。
観月は補欠だったが、
一生懸命声を張って応援し、
数少ない出場機会では三年間の努力をぶつけるように
頑張っていた。
チームを応援するのは当然だが、
もちろん、観月が出ているときは祈るような気持ちで、
応援した。
しかし、残念ながら準決勝で女子も敗れ、
同時に観月達三年生も引退が決まった。
あれだけ気が強くて、頼りがいのあった恵も、
人目をはばからずに涙し、
観月もみんなと一緒に悔し涙を流していた。
最後に、監督、コーチから言葉を贈った。
当然、俺も。
「今日の結果は残念だったけど、
これまで三年間みんなが頑張ったことは、
この先生きていく中で、きっと大きな自信になるはず。
今は、悔しくてたまらないだろうけど、
一生懸命やってきたことに対して、悔しいって思えることは、
すごいことだと思うよ。
その気持ちを忘れなければ、
バスケじゃなくても、この先、何があっても、
一生懸命頑張ることが出来ると思う」
確か、そんなようなことを言ったと思う。
ありきたりすぎだけどwww
試合後、観月からメールが来ていた。
ちなみに、メールは相変わらずのペースだ。
「今日、会いたい」
珍しく、絵文字もなく、シンプルな文章だった。
それが逆に、観月の強い気持ちが伝わって、
「いいよ。1回家帰って着替えて来い。
家の近くまで迎えに行くから」
と、送った。
俺は帰り、そのままレンタカーを借りて、
観月の家の近くまで行くと、
観月が立っていた。
「・・・・ありがとう」
車に入ってきて、いきなりそう言った。
雰囲気からは、まだ敗戦のショックから立ち直れていなかったようだ。
「いい試合だったよ。お疲れ様」
「・・・・うん」
「・・・・」
「・・・・引退かぁ・・・」
「観月」
「・・・・」
「負けたことを悔しいと思うのはいい。
凹むのも仕方ない。
でもな、いつまでもそれを引きずるのはダメだ。
切り替えが出来ない奴は失敗を成功の糧に出来ないぞ」
「・・・・うん」
「悔しい思いをしたら、次は悔しい思いをしないように、
努力すればいい。
ずっとそれの繰り返しだ。
その度に落ち込んでたらこの悔しさが無駄になるぞ」
「・・・・そうだね」
「・・・・メシでも行くか」
まぁいくらなんでも中学生、ましてや女の子に、
そんなことを言うのは酷だったかと少し反省し、
車でも極力明るい話題を振って、会話をした。
幸い、観月もじょじょに明るさを取り戻した。
食事を済ませ、時間まで適当に車を走らせた。
観月が綺麗な夜景が見たいと言うので、
近くのスポットに連れて行った。
「すご~い!」
「なかなかいいねwww」
「キレ~・・・・」
「・・・・」
しばらく黙って、夜景を見ていると、
「コーチ」
「ん?」
「・・・・・もっと近づいていい?」
「え!?」
もともと、人1人も入れないくらいの間しか、
空いていなかったけど観月はそう言った。
「ああ・・・・いいけど」
そう言うと、観月は勢いよく抱きついてきた。
「えっ!」
「・・・・」
「お前・・・近づくって・・・・こういうことかよ(汗」
「人いないから」
「・・・・そういう問題か?」
「うん」
仕方なく、俺は彼女をそのまま軽く抱きしめた。
初めて観月を抱きしめた。
小さくて本当に妹のような子。
知らず知らずの間に、俺は毎日観月の事を考えるようになっていた。