きました5万円
高PER許容は平成景気も同じ論調
最高値予想はどこまでいくか
日本株は絶好調…?2026年に「日経平均5万円」があり得るその“意外な根拠”とは
2025年9月17日に日経平均株価は一時4万5,000円台を付け、その後も付近の値を推移している。昨年末は3万9,894円だったので、年初来で10%強の上昇したことになる。株価上昇の背景にはいくつか理由が考えられるが、気になるのは目下の株価上昇に持続性はあるのか、それともすでに過熱感を帯びているのか。今回の記事では日本の企業業績やマクロ経済動向を整理しつつ、現在の株価が適正かどうか、第一生命経済研究所の藤代氏に解説してもらった。
株価はなぜここまで堅調に推移しているのか?
まず企業業績を確認すると、トランプ関税の発動にもかかわらず、1株あたり利益は拡大基調にある。自動車を中心に利益は圧迫されているものの、自社株買いによる資本効率の改善(発行済み株式数の減少に伴う1株あたり利益の増加)やインフレ(値上げ)による売上・利益水準のかさ上げに助けられ、減益は回避されている。 自社株買いの規模は、直近数カ月にやや増勢が鈍化したものの、それでも20兆円弱で推移しており、これは2023年水準の2倍程度に相当する。これだけの規模の「買い」が存在するのであれば、下値が固いのはある意味当然かもしれない。 またインフレを主因に、名目値GDPの瞬間風速は4-6月期に前期比年率+6.6%と急速な増加を遂げ、水準は630兆円を超えている。こうして企業業績が切り上がる中、PER(株価収益率)が上昇したことで株価は上昇した。
日経平均は“5万円”は何が要因で達成できるのか
次に株価収益率を示すPERについて目を向けてみよう。PERは過去数年の上限付近まで到達している。さすがに先行きは上値が重くなりそうだが、一方で内需が底堅さを増せば、企業業績の見通しがさらに改善し、来年には4.5~5.0万円の定着が期待できる。 日本株の弱点(≒値動きが大きい)は、外需依存度の高さであるとよく指摘されているが、これは裏を返せば、内需の拡大が株価を押し上げると理解される。業績見通しが安定化すれば、割高感(高PER)は許容される。
消費者心理はどうなった?個人消費は本当に回復している?
続いて、個人消費に目を向けてみよう。 しばらく続いていた米国との関税交渉は、大枠で決着し、通商政策の不透明感が後退した現時点において先行きの注目は、内需、とりわけ個人消費が重要であると筆者は認識している。 そうした中、個人消費に明るい兆候が散見されるようになった。新卒の「初任給30万円」が象徴するような若年層を中心に賃上げが進む中、いよいよ賃金上昇が消費に結びつく可能性が指摘できる。 その根拠として、消費者心理の改善がある。物価上昇を加味した実質賃金は、食料品の値上げがきつく、いまだ減少基調を抜け切れていないものの、ここへ来て消費者態度指数(内閣府)が大底を打ったような動きとなっている。 また、街角の景気を示すとされる、景気ウォッチャー調査(内閣府)では家計関連の項目に光明が挿し込んでおり、消費者心理が改善していることをうかがわせる動きとなっている。 生活に身近なモノの価格上昇は続いているものの、名目賃金の上昇が効いているのかもしれない。7月の段階では、過半の企業が賃上げ後(≒2025年度入り後)の賃金を支給していると見られ、消費者が賃上げを実感してきた可能性が指摘できる。 消費者態度指数の構成項目である「収入の増え方」は3年連続のはっきりとした賃上げ実施にもかかわらず、現時点で改善は限定的である。ただし、過去数カ月に方向感は上向きに転じており、消費者が将来の所得増加に対して一定の安心感を抱きつつある様子が見て取れる。そうした安心感もあってか、家計調査の年代別平均消費性向に目を向けると、2025年入り後に緩やかながら反転の兆候が見て取れる。 元来、消費性向については振れが大きいことを考慮する必要はあるが、賃上げが進んでいる29歳以下の層では、特に消費性向が上昇している。これまでは賃上げが進んでも、それを一時的現象と判断し、収入増を貯蓄に回し、消費を増やしてこなかったが、ここへ来て少しずつ将来の所得増加に自信を深めているのかもしれない。 消費者が、将来の持続的な賃金上昇に懐疑的な見方をしている状況において、収入増は貯蓄に回ってしまうが、所得増加の持続性に一定の自信が伴えば、財布のひもは緩くなる。秋以降、消費者が来期の賃上げに自信を深めれば、消費が加速する可能性はあるだろう。
