日経平均株価が市場最高値を更新も、パッとしない日本の半導体銘柄の行方にも左右する。
パウエルFRB議長の講演より来週27日の「エヌビディア決算の方が重要」である理
市場は現実と期待の乖離によって動く。米国時間8月27日にエヌビディアが第2四半期(Q2)決算を発表した後に生じる可能性のある「乖離」は、22日にジャクソンホール会議にて行われる予定の、ジェローム・パウエルFRB議長による講演以上に市場を動かすと私は見ている。なぜか。投資家は、企業がAIにどれほど投資しているのか、そしてその投資から得られる成果がいかに少ないかを懸念している。エヌビディアが投資家の期待を上回り、ガイダンスを引き上げなければ、その株価は急落する可能性がある。もし悪い決算が出れば、市場はそれを「AIバブルが崩壊しつつある」と受け止め、下落はさらに加速しかねない。一方、22日のパウエルの発言はサプライズ要素が少ない。パウエルはドナルド・トランプ大統領の利下げ圧力よりもFRBの独立性を優先してきたため、私は彼が「関税でインフレ率が上昇する可能性がある一方、失業率は4%強と低水準にあるため、利下げの必要はない」と述べると予想している。唯一の懸念は「月次の雇用統計が急減速するリスク」だとニューヨーク・タイムズは指摘している。本稿では、エヌビディア決算がなぜこれほど市場を動かすのか、そして投資家による同社への期待を詳しく見ていく。■なぜエヌビディアが市場にとって重要なのかエヌビディアの四半期決算は2023年5月以降、市場を揺るがしてきた。当時同社は世界的に注目を集めるほどの売上高成長見通しを発表し、私はこれをきっかけに新著『Brain Rush』を執筆した。それ以来、エヌビディアの時価総額は急拡大し、その株価の動きがS&P500種株価指数の動向を左右するようになった。ニューヨーク・タイムズによれば、エヌビディアの時価総額は4兆ドル(約594兆円)に達し、S&P500全体の価値の8%を占めるようになった。さらに、オプション市場もエヌビディアの決算がパウエルの発言以上に市場を動かすと見ている。S&P500のオプション市場では、パウエル発言後に上下0.8ポイントの変動が織り込まれている一方、ニューヨーク・タイムズによれば、8月28日(投資家がエヌビディア決算に初めて反応できる日)のオプション価格は上下0.9ポイントの変動を示唆している。
投資家がエヌビディアのQ2決算に期待すること
■投資家がエヌビディアのQ2決算に期待することここ数週間、投資家の間ではエヌビディアへの投資に懐疑的な見方が強まっている。例えば、パランティアの株価は数週間前に190ドルの高値をつけたが、そのQ2決算が好調だったにもかかわらず、その後20%下落した。下落の一因は、同社株が74%過大評価されていると空売り筋が試算したことだったが、より大きな理由は同社のAI投資による成果がほとんど出ていないことにある。昨年9月、私は生成AIが「期待外れ」だと見ていた。人々はChatGPTを使ってメールやレポート作成を行っていたが、iPodにおけるiTunesストアやパソコンにおける表計算ソフトのような「キラーアプリ」は存在しなかった。今週、マサチューセッツ工科大学(MIT)はこの点を数字で裏づけた。SeekingAlphaで紹介されたMITのNANDA Instituteによる研究は、「企業による生成AI投資が300億ドル(約4兆4600億円)から400億ドル(約5兆9400億円)規模に達しているにもかかわらず、95%の組織はリターンを得られていない」と述べている。この調査は、150人の専門家へのインタビュー、従業員350人へのサーベイ調査、公開されているAI導入事例300件の分析に基づいている。投資家は、このAIからの乏しい成果がエヌビディアの成長見通しを鈍化させると懸念するだろうか。もしそうなれば、エヌビディア株は下落し、テクノロジー株全体の売りにつながる可能性がある。この懸念を踏まえ、27日に発表されるエヌビディアのQ2決算が注目される。5月に同社は、Q2における売上高が450億ドル(約6兆6800億円)になると予想していた。Investor’s Business Dailyによれば、この数字は投資家予想を9億2000万ドル(約1366億円)下回ったが、前年同期比では50%増にあたる数字だ。直近では、投資家はさらに高い数字を期待している。MarketBeatによれば、アナリストたちはエヌビディアのQ2売上高が前年同期比52.4%増の456億5000万ドル(約6兆7804億円)になると予想しており、EPS(1株あたりの純利益)は同47%増の1.00ドルと見込んでいる。さらにThe Motley Foolによれば、市場はエヌビディアのQ3決算における売上高が525億ドル(約7兆8000億円)になると予想している。エヌビディアがこれらの予想を上回り、売上高見通しを引き上げれば株価は上昇するだろう。そうでなければ、エヌビディア株の下落は他のAI関連銘柄にも波及しかねない。一方、22日に予定されているパウエルの講演が市場に与える影響は、はるかに限定的になると私は見ている。