世の中には2種類の人間がいる。

 

機内のコールベルを押す人と押さない人。

 

 

 

ボタンを押して乗務員を呼び出し、要望をその場で伝える。

 

押さない人は、乗務員が通り過ぎるタイミングで呼び止め要望を伝える。

 

 

 

オーストラリア人の80代のお爺さんは、毎回ギャレーまでわざわざ来て飲み物をもらいにきていた。

3回目にギャレーに来られた時に、

「コールベル押してくれたらこちらから伺いますからご足労いただかなくていいですよ」

と伝えると、

「座りっぱなしだと血の巡りが悪くなるから、歩きたいんだよ」

「奥さんにもストレッチして来いって言われたからちょっと体を動かさないとな」

と言い、ギャレーで軽く伸びをして、奥様の分のオレンジジュースも持って座席に戻られる。

 

それからまた1時間くらいして、ギャレーに来られたお爺さん。

お手洗いに行くから今度はクルーに2杯分のオレンジジュースを23のDEまで届けて欲しいと頼む。

 

トレーにジュースとスナックを乗せて座席に届けに行ったはずのクルーがそのまま怪訝な顔をして戻ってきた。

 

話を聞くと、23Dは空席だったが、EとFには若いカップルが座っていて、いると思っていたお婆さんの姿がなかったという。

 

席を間違え伝えられたかな。

トイレから出てきたお爺さんにそのことを伝えると、「あぁ、いいんだよ」

と言って2杯分のオレンジジュースを持って自分の座席に戻られた。

 

クルーが付いていくと、やはりお爺さんは一人で座っておりその隣は全く他人のカップルが座っていた。

 

「おばぁさんはどちら?」

と聞くと、

「いるよ。そこに」

と真正面を向きながら真顔で話す。

 

お爺さんの向く方向は座席モニターだった。

 

少し気味が悪くなったクルーはその場を後にする。

 

 

すぐさま班長、副班長、機長にそのお客さんのことを伝える。

すると機長から

 

「もしかして23のDのお客さん?」

と言ってもいないのにお爺さんの座席番号を伝えられた。 

「そうです。なんでですか?」

と聞き返すと、

 

「あぁ、そうか。そのお客さんね、家族のご遺体がこの飛行機の貨物室に入っているんだよ。奥さんの棺だね。」

 

 

 

ヒューーーーーー。雪雪雪雪

 

 

クルーの間ではとても有名な小話で少しは涼しくならないと、倒れてしまう気温を絶賛更新中のドーハ。

 

 

午後7時半で39度。
さらにものすごい湿気で息苦しい。
 
そんな中、ウォーキングへ出る。

汗をかかないで有名な私も、一瞬で汗をかく。

 

 

背中だけ。

 

 

 

アフメドビン・アリスタジアム。

 
おそらくもう、この中に入る事はない。

カタールリーグを観にいくことも二度とないだろう。

 

谷口さんがいなくなってしまうから。
悲しいなぁ。会いに行けるスーパーアイドルがいなくなってしまうえーん
 
 
でも、おめでとうございます❤️
シントトロイデン。
 
夜でも39度とか叩き出す恐ろしい砂漠ではなく、
音楽と芸術と建築の国、涼しいベルギーでおしゃれにサッカーをするのが谷口さんにはお似合いだ。
 
 
谷口さんに想いを馳せながらスタジアム周辺をぐるぐる回る。
 
 
1時間。
 
歩いて、歩いて最後に全力ダッシュしてとってもいい汗をかいた。
 
 
 
 
 
 
背中だけ。