国内と海外の間、空港の出発ゲート。


出発する人と見送る人、ここが最後の別れ道。


最後に強く強く抱き合い泣きあう恋人同士。

帰国してしまう祖父母に泣きながら行かないでと駄々をこねる子ども。

海外留学にいく子どもを心配そうにでも応援したいと思う気持ちで見送る両親。



笑顔や期待で溢れている到着ゲートとは違い、こちらはいつでも切ないドラマが繰り返される。



泣いて抱き合う人たちを見ると、勝手に彼らの悲しみのストーリーを想像してしまい、いつももらい泣きをしてしまいそうになる。



特に娘を見送る親御さん達を見ると、過去の自分と重ねてしまい簡単に涙腺は崩壊してしまう。



初めてドーハに経つ日。

不安しかなかった。

行かないという選択肢も何度も選びかけた。

「ダメだったらすぐ帰ってくればいい」という保険をかけ何度も自分をはげました。



その日は両親に3時間かけて車で空港まで送ってもらった。


チェックインカウンターにて、慣れない手続きに戸惑いながら、チケットを発券してもらう。

なるべく考えないようにしていた両親との別れがすぐ間近にせまっていた。

さらにこれからの不安と緊張で心はぐちゃぐちゃになっていた。

もうすでに泣きそうだった。

でも、私がやりたい事をこれからやりに行くのに、泣くのは違うと思いグッとこらえる。




何とか涙を引っ込めたのに、空港のマネージャーに笑顔で、「ご両親に”最後”の挨拶してきな」と言われ鼻がツーンとなってしまう。


入国ゲートが近づく。

ロープでチケットを待っている者とそうでもない者の境界線がくっきりと分けられている。


くるっと振り向き両親に向かい合う。


ここでバイバイをしてしまったら、すぐに会いに行ける距離に両親はもういなくなってしまう。心地の良い実家での生活が遠のいてしまう。


でも笑顔で「またね!」と言いたい。

「すぐクビになっちゃって、来週にでも帰ってくるかも」と精一杯の冗談を言って1人だけで先へ進んだ。


両親も私の気持ちを汲んでくれたのか、笑顔で送り出してくれた。



両親に背を向けた私はもう限界だった。

目には涙が溜まりに溜まっていた。


イミグレーション手続きをすませ、エスカレーターで階下に降りる。

ふと前をみるとエスカレーターのガラス張りの壁の向こうに両親がいた。

笑顔で手を振っていた。


不意打ちだった。

目が小さくて本当に良かった。

泣いてしまっていたけど、気づかれないで笑顔で手を振りかえせたと思う。

下に降りるエスカレーターで両親が見えなくなった瞬間、堪えていた涙がドバドバ流れ、うぅっと泣いた。




何ヶ月か経った後に母親にその時にどんな気持ち送り出してくれたのか聞いてみた。

泣かないように気を遣ってくれたのか、それとも私と同じで姿が見えなくなってからもしかして泣いたのか。


母の回答は、


「空港にいたあんたの所のマネージャー。いい男すぎてびっくりしたよ。もっと話せばよかったなって考えていた」


…。



照れ隠しかな?



泣いたよね?


「空港に来ることなんてそうないから、色んなところ回って買い物もできて、とても楽しかったよ」



あぁ。


これ。


泣いてないやつ。




そんな感傷に浸りながら、

今日も成田のkiss&cryを通って

ドーハへ向かうとする。