今夜の杭州フライトのために昨日、一昨日と
(※1)めんどい、しんどい、行きたくない、早く帰りたいフライトをやっつけたのかも。
入社して12年たっているけど、好きなフライト&ステイはいまだにワクワクする。
他のフライトと違って、準備をウキウキしながら出来る。
昨日のムンバイフライト(※1)。
搭乗のお客様も残すところあと数人、となった時に、ビジネスクラスの搭乗ブリッジに4、5人のスーツ男を引き連れたカタール人女性が現れる。
地位が高そうなスーツ男が彼女に媚びへつらっている姿が見える。
何も聞かされていなかった私は、ズラズラとメンズ達に囲まれて現れた女性を前に立ち往生する。
「すごい人オーラー」が凄かったから、きっとすごい方なんだろうと一瞬でアホな計算をし、すぐさま笑顔を取り戻して挨拶をする。
100倍の笑顔と挨拶を彼女に返され、眩しさに目が開かなくなる。
座席にご案内をした後、スーツ男の長らしき者に「あの方どなた?」と聞くと
目を丸くして驚き、そして蔑むような、憐れむような表情で私を煽り見る。
「マジで知らないのか。(元)社長の奥さんだ」と小声で叫ぶ。
「マジか。知らないよ。紹介されたことないもん」
スーツと話しながら奥様を盗み見ると、他のカタール人の乗客が彼女に気づき、次々に挨拶にしに行く様子が見える。
「さっきまで社長と一緒だった。本当はこの便に社長も乗る予定だった」
と身の毛もよだつような恐ろしい怪談話を始める。
ムンバイに着いた瞬間に私は働き口を失うところだったのか。
(そんな方じゃないけど。)
社長とのニアミスに安堵をしたからか、スーツに「社長によろしく伝えて」と調子に乗りジョークを飛ばす。
「うん、分かったよ。伝えておく」と真面目に言うから慌てて「嘘。ごめん、やめて」と止める。
スーツ達を見送り、夫人へ媚びへつらいに向かう。
ところがあまりにも気さくで優しい方で、媚びもへつらいもする間もなかった。
ニコニコされながら、まぁ、日本の方なのね。どうもありがとう。今日はよろしくお願いね。と、一気に緊張をほぐしてくださる。
この機材の飛行機の安全ベルトは車のシートベルトみたいに3点式になる席もある。
2点ベルトのみをされていた夫人に「もう一点のベルトもお願いします」と伝えると
「あら、そうよね。言ってくれてありがとう。全く、大袈裟すぎるわねこのベルト、いらないわ」
と少女のように可愛らしく言う。
ナッツをお出しするのが少し遅れてしまっても、「ゲートに引き返せ!」とは決して言わず、ニコニコしながら「ありがとう」と言ってくださった。
こちらの姫は本物のプリンセスだ。
スープのお味が「とーっても美味しかったわ、このスープ」と量が多いのに完食をされた。
(完食をするお客様は中々いない)
素敵な方だったなぁ。奥様。
2本(※1)フライトをやっつけたおかげでもう気持ちが楽だ。
こんなにフライト前のモチベーションって違うんだな。
天と地の差だと驚く。
ただフライト中休憩はもらえないから、パワーナップを取ろうか。