真魚と嵐は陽が昇る前に出かけた。
初瀬の奥に寺がある。
その寺のお堂の前。
そこが待ち合わせの場所であった。
「これだ…」
真魚がそう言って、何かを投げた。
蜻蛉が難なく受け取る。
「これが…」
蜻蛉が手にした物は巻物であった。
「巻物であったのか…」
山蝉が、蜻蛉の手にしたものを見ている。
「何も聞かされてなかったのか…」
二人の様子に真魚が呆れている。
「我らが一族の秘密…」
「それが何であるか知る者は一人だ…」
蜻蛉が、巻物を見て言う。
「その一人とは劉羽とかいう奴か…」
真魚が更に問う。
「そうだ、今は劉羽様が我が一族の長だ…」
「四鬼一族か…」
真魚が蜻蛉の答えにつぶやく。
「約束は守ってもらう…」
真魚が蜻蛉と山蝉に言った。
「俺達はこれを頂きに来ただけだ…」
蜻蛉が真魚に言う。
鹿牟呂と浅葱の命までは取らない。
そう言う事である。
「だが、お主はあの時…」
「鹿牟呂を殺そうとしたのではないのか…」
真魚が蜻蛉にその理由を聞く。
「手に入らねば殺せ…」
「劉羽様にそう言われたからだ…」
「鹿牟呂が死ねば無いも同じか…」
真魚がそう言って笑みを浮かべる。
「そうだ…」
蜻蛉が、手にした巻物を見ている。
「おそらく、これは開祖様が会得した秘術…」
「それが、他に漏れることはないのだ…」
蜻蛉はそう言いながら、肩から掛けてある袋に入れた。
「ところで、劉羽とやら…今どこにいる…」
真魚が急に話題を変えた。
「劉羽様は神出鬼没…」
「俺達にもそれは分からない…」
蜻蛉が真魚に答える。
「地の龍…動くのはいつだ…」
真魚が更に踏み込んでいく。
「俺達は何も知らぬ…」
「それはお主の方が分かるのではないのか?」
蜻蛉は真魚の中に、底知れぬ力を見ていた。
「劉羽とやらが小角殿の考えを逆手にとるなら…」
「俺は、次の新月だと考えている…」
真魚がそう言って笑みを浮かべた。
次回へ続く…
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