「何か…おかしいぞ…」
「身体がぞくぞくする…」
美鷺
がその変化を感じている。
「まさか!闇か…」
後鬼はすぐにそれを観じた。
「波動が上がっていると言うのに…」
後鬼はそれを不思議に思った。
「これだけ波動が上がれば、低きものは近寄れぬはず…」
後鬼の考えは間違ってはいない。
「沢山の魂が…」
美鷺が、それを感じていた。
「もしや!
篩
か!」
前鬼が、何かを閃いた。
「帝の奴…多くの黒き者を送り込んだか…」
「今度こそ…失敗せぬように…」
前鬼は確信した。
「それでは…餌を撒いているようなものじゃな…」
「一人や二人ならまだしも…」
「無数の纏わり付くものが、落とされたのじゃからな…」
後鬼が笑ってそう言った。
「闇にとっては、願ってもない…」
「ご馳走さま…ということか…」
前鬼も全てを見抜いていた。
高き波動は細かく、速い。
低き波動は大きく、遅い。
低き波動は、高き波動については来られない。
溢れでた低き波動を、闇が狙っていたのだ。
「真魚殿と嵐が付いておる…」
後鬼が、力の差を感じ取っている。
「心配ないじゃろ…」
喧嘩はするが、嵐の力は認めていた。
「朱雀!」
真魚の棒が、灼熱の炎を上げた。
その炎が天まで昇り、巨大な鳥に姿を変えた。
「征け!」
真魚の声で、巨大な鳥が落ちてくる。
灼熱の炎をその嘴から放ち。
真っ直ぐに闇に向かう。
その波動が、闇の動きを止める。
闇が身構える。
炎で焼かれる事を待っている。
昴にはそう見えた。
「闇が受け入れている…」
昴がつぶやいた。
光と闇。
光が無ければ影は存在出来ない。
だが、闇の中で耀いてこそ、光は光と言える。
赤き炎が闇を焼いてく。
光が闇を切り裂いていく。
「すごい…」
舞衣はその光景に心を奪われていた。
阿瑠は口を開けたまま、動くことすら出来ない。
必死に抵抗する闇。
だが、その勢いも衰え始めた。
「青龍!」
真魚が叫んだ。
青い光が真魚の棒に集まってくる。
その耀きが膨れあがり、天に向かう。
そして、天に昇った碧き耀きが、龍の姿に変わった。
「征け!」
真魚が最後の札を切った。
碧き龍が、碧き炎を吐きながら頭を下げた。
螺旋を描きながら闇に落ちてきた。
その顎を闇に食い込ませ、碧き炎を吐いた。
碧き炎は、全てを浄化し宇宙に還す。
闇が硝子の様にひび割れている。
かけらがこぼれて、風に舞っていく。
時間はそれほどかからなかった。
青き龍がその首を上げた時、全てが終わっていた。
「戻れ、朱雀、青龍!」
ぎゃぃぃぃん!
真魚が叫ぶと、甲高い青龍の叫びが響いた。
その波動が、大地と空を抜けて行く。
闇は透明なかけらになり風に舞った。
「あれ?」
昴が気付いた。
光の盾も消えていた。
真魚が膝をつき、肩を揺らしている。
呼吸が荒い。
「大丈夫か?」
嵐がすぐに跳んできた。
「お主らの力も…相当上がったな…」
真魚が荒い呼吸の中でそう言った。
「おかげ様でな…」
嵐がそう言って笑っていた。
続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-