先日の名古屋ウィメンズマラソン。
ゴール前。
田中選手と小原選手のデットヒートは、見応えがあった。
田中選手の強さは圧倒的であった。
小原選手は、1秒の差を遠く感じたかも知れない。
時間では無い。
それは、心の距離だ。
それとは別に、この大会で私の目を釘付けにした選手がいる。
アテネ五輪で金メダルを取った、野口みずきさんである。
序盤からあまりいいところはなく、結果も付いてこなかった。
見た目は…である。
だが、ゴール前に野口さんが現れたとき…
美しかった。
光の羽を背負っている様に見えた。
失礼であるが、「野口さんってこんなにきれいだった?」と思ってしまった。
何があったんだろう?
私は気になった。
あとで、いろいろな映像を見てわかった事であるが、
走りながら、全てを受け入れた様なのだ。
映像には、沿道の方や他のランナーの方達から、声援を受ける野口さんの姿があった。
全てを受け入れたとき…
野口さんの中に、今まで見えていなかったものが見えてきた。
そんな感じであろうか?
私は、そう感じた。
メダルを取ったり、結果を残すことだけを追い求めて来た人生。
だが、そうではないことに気がついた。
「花道のようだった…」と野口さんは言っていた。
花は勝者だけに配られるものでは無い。
そう気付いたのかも知れない。
いわゆる野口さんが見たのは敗者の世界だ。
勝ったもの以外は、皆敗者だ。
だが、真実はそうではない。
その方達の耀きの中で、自分を見たのだ。
自らの体験が全てを変える。
人は、体験することで、自分を変える事が出来る。
野口さんは、ランナーの中に光を見た。
そして、その光に触れたのだ。
恐らく…
自らもその光を手に入れたに違いない。
そして、その光を身に纏い、ゴールした。
私が見たのはその瞬間だ。
なかなか感動的なシーンであった。
栄光と、挫折。
その先にあるものは、絶望だけではない。
成し遂げた者だけが、手に入れられるものがある。
野口さんのゴールは、ここだったのかも知れない。
成し遂げるとは…こういうことなのかも知れない。
私はそう感じた。
今後、野口さんの進退は表明されていない。
私としては、誰かを育てて欲しいと願う。
もう、畏れるものは無い。
最強の光を手に入れたのだから…
そう感じているのではないだろうか。