刷り込み | 空の宇珠 海の渦 

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-そらのうず うみのうず-
空海の小説と宇宙のお話




中学まで野球をやっていた。

どちらかというと守備の人でバッティングは良くなかった。

それでも小学生の時は良く打っていたのだ。

小学生の時はバットの持ち方などあまり気にしなかった。

自分が打ちやすい形で打っていた。

5番を打っていたのだから結果もそこそこだった。


だが、中学生になった時にバットの持ち方をコーチにいじられた。

コーチといってもただの先生だ。

どれだけ野球を知っているのかもわからない。

だが、素直な野球少年だった私は変えた。

「こう握らなければいけない」と思い込んだ。

それから全く打てなくなった。


守備は勘が良かったのでうまかった。

バッターが一度、空振りをしてくれればどこに飛んでくるかわかった。

それで使ってもらっていたようなものだ。


つい最近、You Tubeで元プロ野球選手が教える動画を見た。

その内容があまりにすごかったので呆れてしまった。


子供の頃に教えてもらったことは、全て間違いであったのだ。


「ボールが当たる瞬間に、
        一番力が出るようにポイントを自分で探してください。」

こんな事は一度も言われたことがなかった。

持ち方はどうでもよかった。

持ち方を変えたばっかりに、
            インパクトの時に力が伝わっていなかったのだ。


それを見た瞬間「恐ろしい」と思ってしまった。


間違えた情報をすり込まれても気づいていない自分がいたからだ。

間違えていて結果がでないのに「なんで打てへんのやろ…」

と形にこだわり悩んでいる自分がいたからだ。


刷り込みとはおそろしいものだ。

子供は頭が柔らかい。

記憶能力も高い。

その時代にすり込まれた情報はその子の人生を左右する。

今、中東で起きている事実が自分にも起きていたということだ。


善悪は立ち位置によって入れ替わる。

文字の読めない子供に嘘をすり込んでも、子供は気づかない。

だからこそ間違った情報をすり込まれると、取り返しがつかない。


人は皆、自分が正しいと思っている。

だれでもそうだ。

だが、その自分に嘘がすり込まれている。

そして、その事に気づいていないのだ。

私は野球に関しては完全に間違っていた。


結局、自分で確かめるほかにない。

しっかりとした「自分のフィルター」を持たなければと
               
感じた瞬間であった。