私の魂は2人ともほぼ休眠したまま、とりあえずまた日本に転生した。
なんでそうなったのかは知らない。

上の方で何か決まったんだろう。

特段指示も無かった。

貧しい田舎の農家だったと思う。


女だった。


人買いが来たので、私が行く事にした。

この時の両親のことは本当に覚えていないが、なんと無く感謝された事は覚えている。

 

私が行かなくては他の誰かになっただろうし、私は特に別に気にして無かった。

本能的に色々知るように動くような癖のある魂だったから、村から出たかったのかも知れない。

特段何も本当に残ってないから、大して何も考えてなかっただけだと思う。

 

 

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時が進んで、私はある花街に売られていた。
 

やりたい事も特段無かったし、色々な人が来て沢山話を聞いた。

芸事の練習は嫌いじゃなかった。

下手でも続ければいつかできるようになったし、できるようになることが単純に嬉しかった。

 

そこである女と出会ったが、彼女は晴天の霹靂だった。

場所も時代も分からないので、彼女が花魁なのか太夫なのかは分からないがトップスターだったことは覚えている。

 

 

彼女は美しく、優しく、芯が強く、頭がよく、粋で誇り高かった。

完全なる身一つで、こうも人は立てるのかと関心していた事をよく覚えている。

彼女の心身には経験からの安定感があった。

私はすでに名も覚えていない一人の遊女に感動し、先生と心の中で慕っていた事を覚えている。

 

人は弱く後ろ盾も何も無くただの身一つであったとしても、己の努力を怠らず、律し、きちんと極めれば誇りを持って真っ直ぐきちんと立てるのだという事が分かった。

 

人間ドラマを横で見ながら、充実していた事は覚えているが他はあまり覚えていない。

 

日本じゃなかったらこうはならなかったかもしれない。

 

尊厳は自分で作ることができる。

 

この時代で一番大事な学びだったから、これは忘れまいと思った。

 

 

私は、彼女ほどのし上がれはしなかったが、そこそこにはなれた。

芸事は然程だったが生来書物は好きで、客もインテリ系だった事はなんとなく覚えている。

 

あの場所は様々な人間を知るに良い場所だったように思う。

私にとっては悪くない日々だった。

 

 

そんなある日梅毒になった。

 

一度目は回復したが2度目は駄目でその時に死んだ。

 

たしか鼻がもげた事を覚えている。

 

病気の時、物置に寝ていると、その時にストーカーになった山賊のような客が物置のドアを叩いて何か言っていた。


私も何か喋ったが覚えてない。

私を諦めろと言ったような気がする。

彼に本気で好かれてる事も知っていたが、妙な執着と合わせてタチの悪い性根が見え隠れしていて、ただどうにも面倒だった。

暴れるしなぜそこまで執着するのかよくわからなかった。

 

そういえば、特段恋愛はしてはいなかった。
 

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そして時が経ち、日本が大変な戦火に覆われていた時代には産まれておらず、現世に至る。