そっと
そっと
いった夏
いつものように
わたしを驚かせないように
寂しがらせないように
すこしずつ
すこしずつ
色を薄くして
いつのまにか
秋の後ろに
静かに消えてしまう
ねえ
あなたにひろがる空は
まだ夏のまぶしさを残していますか ?
まっすぐに胸を灼く
切ない熱さを注いでいますか ?
わたしの見上げる空は
もうすっかりひんやりと蒼く高くて
夕暮れには
窓を開けていられないくらいに
つめたい風が
頬と素足をなでてゆく
かさりと乾いてきた
朝顔や
胡瓜や
ひまわりたちの葉の裏や
月見草や
色づいたねこじゃらしや
すりきれたとんぼの羽や …
揺れるコスモスのかげに
ひかりに
朝ごと
夕ごと
わたしが触れる
世界の隅々に
ひそやかに秋が佇んでいる
夏から受け取った熱い切なさを
冬に手渡すために
すきとおる眼差しと
しっとりと柔らかな指で
優しくなだめながら
最後の名残りの気配をふくんだ
午後のかがやく陽射しを
いとおしくまぶたに受けて
またね と
夏にさよならを言う
ありがとう
またね
…
秋に見守られて
今年もまた
ふたりだけの約束をする