思わず立ち止まる。この言葉にもそろそろ飽きが来たころ、神の恩恵のように、まさに「思わず立ち止まりたい」女優があらわれた。若村真由美である。


『白い巨塔』以後、このひとの変革というのはじつに心地よい。

黒木瞳扮するバーのママに女としてのプライドを傷つけられつつも財前教授夫人として立ち向かうさまがけなげですらあったころ、彼女はまだ「清純派美人女優」の割れた殻を背中にぶらさげていた。しかしドラマが高視聴率を取り話題がうなぎのぼりになるなかで、とつぜん実生活で、

釈尊会教祖夫人

というものすごい地位を確立していたことを発表。

あのあたりで、まずお決まりのようにメレンゲあたりのトーク番組に出演。ナントカ夫人、という、その極みのぶぶんはさらっと流し、財前夫人の熱演ぶりだけを視聴者に再現されられるトーク番組はマチャミひきいるメレンゲの気持ちくらいなもの。グッチョイス。(高畑さんも前の会で出てたし。)


そんな彼女、最近あんまり見かけないわ。と思っていたら、実は水面下で若村真由美自身を再構築しつづけていたことが先日判明したのである。

2004年秋。八つ墓村森美也子役。

2006年新春。風林火山三条の方役。

そして2006年今クール『けものみち』佐伯米子役。

画面を凝視してゆくと、回を追うごとにすこしずつ、彼女の顔が変化しているのがわかる。あの、蝋人形のような顔はなんだ。あの、白塗りに縁取りメイクはなんだ。妖怪?若村に、白い巨塔の野川由美子がのりうつったか。それともナントカ夫人の僥倖か。ひええええ。


どちらにせよ、彼女にはそうした素質があったのである。

アリーマイラブの声を担当していたころ、その片鱗はすでに出ていた。あの、キャリスタフロックハートの顔に、なにやら海苔のようにはりついた奇声。いいようで、それは微妙に浮いていた。おもうに、アリー的現代女性の「だめさ」加減とは、若村氏は無縁の地位にすでにしていたのである。それゆえアリーの声ははりつけた海苔だったのである。さもありなん。


これから彼女は、どこへいくのだろう。

もっともっとぶっちぎりに、怖い女優 のポジションを確立し、第二の岸田今日子目指すのもよし、江波杏子的恐怖の姑役になるもよし、夏木マリを蹴落として宮崎アニメの妖怪婆の地位を獲得するもよし。

しらないけど。