ひとつ、ながいあいだ不思議に思っていることがある。
ジャニー喜多川は、いったいいま幾つなのだろう?
ま・・・・そんなことはいい。
ドコモのFOMAパケットパックのCMである。
わたしはこれを観て、ひとつの確信を得た。
ジャニーズの、人材発掘ないし、人材育成、これぞ、と思った人間を、ある種のジャンルに送り出し、才能を開花させてゆく、というシステムは、はっきりいって、すべての能力開発セミナーの手本になる、と。
ここに薬丸裕之という男がいる。元シブがき隊ヤッくん。
ヤッくんが、ドコモの宣伝に出る・・・・それもなんの前触れもなく、突然。
ドコモって、ブランド志向なのかなんなのか知らないけど、それはながいあいだ、今ハヤリの売り出しタレントしか使わないスタンスを取ってきた。それが、薬丸である。その薬丸が、こなれた業界人に扮し新人アナ役加藤あいの前でパケットパックについてそれは流暢に語りだす。場所は回転寿司屋。皿の上にはうに。BGMは「スシくいねえ!」(しかもちゃんとテロップまで入れて)。最後、皿の模様はヤッくん。
ヤッくんというひとの司会者然としたたたみかけ話術については、語るまでもない。このひとの、ただのやんちゃなジャニーズボーイぶりが、ある日突然はなまるマーケットで綺麗さっぱり払拭されてしまったことを、思い出す人はいまやないだろう。そして、ただ司会者としてまるく収まるだけでなく、岡江久美子という天然バクダンを相手にできるのは、このひとぐらいしかいないのではないかともっぱらの噂である。和田アキコに対してシールの役目をになう、峰竜太のように。しかも、なんの違和感も驚きもあたえずに、彼はそのようなスペースにすんなりとシフトしていったのである。それほど彼の変身振りというのは見事で、ソツがなかった。
であるからして、ドコモCMに突然、ヤッくんらしき人が出てきても我々は驚くに値しない。
彼はいまや、スシくいねえ!を歌ったそのへんのジャニタレではなくて、立派なひとりの業界人である。これがフックンだったら、スシくいねえ!はギャグでなくて悲哀になるのだが。
ジャニタレは大勢いる。いわば彼らは、合宿所にかよう高校野球の集団である。彼らは卒業が近づくにつれ、ある種の「すみわけ」というものに直面する。
実力俳優か(舞台俳優はこれには入らない。だからほんとうに一握りの選ばれた人だけがなれる)。
ムード俳優か(このひとたちは時々は火曜サスペンス劇場にも出なくてはならないし、忘れられないように昼ドラにも出なくてはならない。役は無論むかしのアイドルのダンナの役)
歌手か(ジャニタレには一番厳しい道である)。
バラドルか(喋りだけで生きていかなくてはならないのですこし厳しい)。
別の道か(カーレーサー、バイク、など、輝かしい仕事から、ホストまで幅広い)。
その他大勢か(ジャニタレであったという肩書きだけで残りの人生を生きる)。
そこに、燦然と輝く、司会業というスペース。
いまのところ、スマップの中居がダントツに才能があり、となりに薬丸、以下順不同、TOKIOの太一、Kinkiの光一、がくるが、あとの人材は、実に未知数。
構図としては、ヤッくん以外はジャニタレント時代から、相当の人気を誇っていて、司会業と兼業しているということ。言ってみればヤッくんは、正真正銘、横はいり。
そんな、ヤッくんの鮮やかな生きぶりを観るたび、ひとというのはどこでどう転ぶかわからない、と、わたしはしみじみと感慨に浸るのであった。知らないけど。