無抵抗なものに手をあげる

仲間から外されない為に

振り下ろされた拳(こぶし)は

生温かいあいつの皮膚を

一瞬にして血に染める

殴られても 殴られても

手を出さない相手に

俺は言われるがまま

拳を振り下ろす

勝ち誇ったように

俺は殴り続けた


なのに

日増しに募る違和感 虚しさ

殴る手も次第に痛みを増してきた

摩れた痛みとは別の

もうひとつの痛み


何かが俺の中ではじけた

強いものは

本当に強いものは

殴られても 殴られても

手を出さない相手

不気味なほどに冷静でいられるのは

弱い俺の心を読み取っているからなのか

強そうにしている奴らは

群れを作って相手を攻撃する

相手はひとりだというのに

ちっぽけな俺の心

傷つけることは

それにも勝る痛みを

受け継ぐものなんだと

今更ながら気付いた


次の朝

仲間から抜けたいと

ひざまずいた俺は 

校庭の裏庭の隅で

血だらけになって目を覚ました

動けない俺を救ってくれたのは

俺に殴られていた

あいつの暖かな手だった・・・






  弱いものを攻撃するのは、実は弱い心の集まり。

   そのことに気付いた時、本当の強さを知る。



   風香・・