19日に中央花道寄りで観劇。

怪談 牡丹燈籠
歌舞伎を見始めた頃に、仁左衛門丈の伴蔵、玉三郎丈のお峰で見た覚えがある。
当時は愛之助丈が新三郎で、水浴びをする場面があったと思うが、今回はいろいろと大幅にカットされていた。
お国(河合雪之丞丈)がなんか亭主思いの女性みたいになってたけど、すっごい悪女だった記憶がある。(なお、当時は吉弥丈がお国だった。)

舞台は船の上から始まる。
お露(玉朗丈)と乳母のお米(吉弥丈)が、お露が萩原新三郎(喜多村緑郎丈)に恋い焦がれている旨を医者に話している。
その後、舞台は新三郎の家に移り、お露とお米はすでに亡くなり幽霊になっている。
牡丹燈籠といえば、カラン、コロンという下駄の音だが、この音がまさしくイメージ通りのカラン、コロンだった。

新三郎とお露(ガイコツ)の濡れ場を目撃した伴蔵(愛之助丈)はほうほうの体で逃げていく。(お露とお米がガイコツのマスクみたいなのをかぶってたけど、以前は影絵でガイコツを表現していたと思う。)
その後、お峰(玉三郎丈)のすすめもあり、伴蔵は家にやってきた幽霊に「100両と引換に新三郎の家の御札を剥がし、観音像を取り上げて、お露の霊が新三郎と会えるようにする」と約束する。
幽霊が約束通り100両を持ってきて、お峰が「「ちゅうちゅう、たこかいな」と小判を数える場面はやっぱり面白かった。

新三郎は取り殺され、故郷に帰った伴蔵は商売で成功し、お峰はきれいな女将さんになっていた。
お峰が馬子の久蔵から伴蔵の浮気を聞き出す場面、お峰の表情の変化が素晴らしい。
うっすらと微笑んだその顔に怒りと嫉妬が浮かんでいて、まるで般若のようだった(と、以前見た時も思った)。
昔なじみのお六(歌女之丞丈)に向かって、しんみり愚痴る場面は可哀相だった。

商売に成功して調子に乗ってる伴蔵はお国に入れ上げて飲んだくれている。
まあ、古女房をコワがるところに可愛げが残っているけどな。
「成功した男が妾をかこって何が悪い」みたいなことを言う伴蔵にお峰はブチ切れ。
そりゃそうだ。
男の甲斐性だというなら、お妾さん以上に正妻にお金を使わなきゃだめだよ。
お妾さんに10万のバッグを買うなら正妻には100万のバッグ、お妾さんと1万のディナーに行くなら正妻とは10万の日帰り旅行。
こうしておけば、今のご時世でも愛人の存在を見ぬふりしてくれる奥さんもいるのでは? 知らんけど。

お峰は「昔、夜なべしてお酒と肴を買ってあげたら、あんなに感謝してたくせに」などと甲高い声でまくしたてる。これでは伴蔵でなくてもまいってしまう。
ヒステリックになった女性の面倒くささがうまく出ていてすごいなぁと思った。
しまいにはお峰が「別れてやるから手切れ金100両寄越しなさい」みたいなことを言う。

昔の悪事を口外しそうなお峰を、伴蔵が外におびき出して殺したような記憶があるのだが、今回のラストは違った。
お六にお米の霊がとりつき、お峰にお露の霊がとりつき、いや、伴蔵の良心の呵責が見せた幻覚だったのかもしれないが、伴蔵は二人を刺し殺してしまう。
最後、気が触れた伴蔵が宙を舞う灯籠を追って花道を引っ込んで幕。
紫式部の「亡き人にかごとをかけてわづらふも おのが心の鬼にやはあらぬ」という和歌がふと頭に浮かぶラストだった。


↑京都駅でお土産に買ったゴールド栗。

 

 

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