盛大にネタバレしてるので、観劇前の方はお読みにならないでください。

 

5日の昼の部を前方中央で観劇。


新作歌舞伎 道成寺再鐘供養 仙石権兵衛出世噺
最初、幕を下ろした状態で、僧(千次郎丈)が安珍清姫の伝説を語りながら、客席をぐるりと歩く。
幕が開いたら屏風だけのセットで、清姫(壱太郎丈)が安珍(宗之助丈)を口説いている。
安珍は清姫を「今夜忍んでいく」と騙して逃げ、清姫はそれを追う。
清姫の情念のこもった踊りはよかったが(壱太郎丈って、「GOEMON」のフラメンコとか、情念のこもった踊りがうまいと思う)、正直、この序幕を見た時は「新作歌舞伎、大丈夫か?」と思った。(←杞憂でした。すみません。)


ところ変わって、道成寺の鐘供養。
聞いたか坊主が見張っているところへ白拍子がやってきて躍りを披露する、まあいわゆる道成寺もの。
壱太郎丈は汗だくで踊っていた。
鐘が落ちたところで暗転して休憩。


次の場面は山中の一軒家。
そこに住む老婆(吉弥丈)は旅人を殺して身ぐるみ剥いでいると言う。
道に迷った仙石権兵衛(愛之助丈)が花道から現れて、老婆に一夜の宿を所望する。
権兵衛は老婆にせがまれて自分の初陣について語るのだが、それが実盛のような感じだった。


実は老婆は清姫の亡霊で、1000人の男の生き胆を食らうと元の体に戻るとかなんとか。あの可憐な清姫がなんてこったい。
ちょうど権兵衛が1000人目だったのだが、老婆が拾って育てたという気立ての良い娘の小笹(吉太朗丈)が権兵衛に一目惚れして逃がしてしまう。
小笹は権兵衛の身代わりに老婆に切られ、改心するよう老婆に哀願するも、怒り狂った老婆は聞かない。あの上品な吉弥丈がすっかり鬼婆になっている。

そこへ現れた権兵衛が老婆に斬りつける。おい、コラ、ヒーロー! 間に合ってないぞ!!
もう少し早く出てこれば小笹は助かったのに。(まあ、歌舞伎にはありがちなんだけど。)


権兵衛が老婆と斬りあっていると、突然家が壊れ、障子を破って大蛇が登場。
まるでどこかのお祭りに出てくるドラゴンみたいに真っ赤な大蛇で、長い尻尾を振り回す。しかも、火炎放射メラメラときた。
すごいぞ、大蛇! この文化財の中で火を噴くか!! おまけに尻尾が舞台からはみ出してるぞ。
権兵衛と立ち回った後、大蛇は花道を逃げて行った。


さて、またも場面は道成寺。根来衆が鐘を釣り上げようとするが、上がらない。
なんと、さっきのドラゴン(←違)が鐘の上でとぐろを巻いていた。
ドラゴンは赤い髪(「連獅子」の仔獅子の精のようなもふもふの毛)に金の角、青い隈取りの蛇の精(壱太郎丈)の姿になる。
そこへ花道から仙石権兵衛が押し戻し(永楽館的に言えば、「神の鳥」の山中鹿之介)の格好で大きな竹を担いでやってきた。
はっきり言って、別人です。
この権兵衛だったら、小笹ちゃんは惚れたかなぁ…?


そんな権兵衛をみた清姫の霊は「あなたじゃ、あなたじゃ、あなたじゃわいなぁラブと権兵衛にしなだれかかる。
いやいや、全然似てないって! 安珍は優男だったやん!
青隈の亡霊に迫られて、さしもの権兵衛も大弱り。
結局、清姫の霊は仏の功徳で成仏して、すっぽんに消えていった。
権兵衛は花道で観客にご挨拶して、鐘を担いで花道を去っていく。


いや~、面白かった!
道成寺、実盛物語、黒塚の面白いところを混ぜただけかと思ったけど、ここまで派手にやるとは思わなかったわ。
ストーリーがあるかというとないと思うが、舞踊あり、戦語りあり、火を噴くドラゴンありで、楽しかった。
永楽館みたいな芝居小屋では、客席と一体になって盛り上がる、こういうお芝居が合うと思った。

 

 

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