大人になってから母から聞いた話。
私が子供の頃、弟のクラスに、
当時は珍しいシングルファーザーがいたらしい。
夜の役員会で何度も顔を合わせているうちに、
親しくなったそうだ。
奥さんが子供を置いて出て行ったらしい。
当時は珍しく、母は気の毒に思ったようだ。
が、良く話す保護者、くらいにしか思っていなかったらしい。
その人がある日、保護者会の帰りに、
今からコーヒーを飲みに行きませんかと、
母を誘ったらしく、
こんな夜にコーヒーなんて飲んだら、
眠れなくなるからと断ったらしい。
母は職場の男性同僚と平気で旅行に行くような人で、何というか、母ならアリだと思わせる人だった。父も許容していたし。
容姿は悪くないのだが、色っぽさが皆無な人だった。
その後もお誘いは続き、
役員会はいつも夜に終わるので、
今から食事に行きませんかと言われても、
もう晩御飯食べたからと断っていたらしい。
ほうほうと話を聞いていた私は、
そのお父さん、よっぽど母と食事に行きたかったのだなと思った。
そして、母の断り方が上手な事にも感心した。
ある日ね、と憎々しげに母は言った。
今からお酒を飲みに行きませんかと誘われて、
ほらお母さんお酒あんまり飲めないし、
車で来てたから断ったのよ。
そしたらなんて言ったと思う?
僕が奢りますから食事に行きませんかって言ったのよ!!!!!!
と、非常に怒って話すので、
えーっと、奢るって誘われて、なんでその時だけそんなに怒ったの?
と私は聞いた。
普通なら夫も子供もいる女を、
しつこく誘う事に怒りそうなものだが、
私の母は違った。
あの男!私をバカにして!
貧乏やと思ってご馳走するとか!
ほんと腹の立つ!
と、言うのだった。
お母さん、それは違うのでは。。。
と恐る恐る言ってみたのだが、
なーにが違うもんか!
貧乏やとおもうてご馳走するとか何様や!
お母さん頭に来てな、財布のチャック開けてな、
あんたに奢られるほど貧乏やないで!!
って、財布の中の万札見せてやったんや!
それから二度と誘って来なかったわ!
はっきり言ってやってスッキリしたわ!
と、ガハハと笑っていた。
お母さん。。そっちなん。。
ていうかそうじゃないと思うんだけど。。。
色々ツッコミたかったが、
母がそう思うならそれで良いのだろう。
上手に断っていたのではなくて、
本当に毎回普通に断っていただけだったのだと知り、それがお昼なら割り勘でコーヒー飲みに行ってたんかい!
と思ったのだった。
私の母はASDなのではと、
最近になって気づく。
嘘が苦手だし、思った事は全部言うし。
他にも色々思うところがあるが、
父が酷すぎて、母の個性に気づいていなかった。
普通男性にそれだけ誘われたら、
あら私に気でもあるのかしらって、
うまく断るモノだと思っていたが、
コーヒーを飲もうと言われたら、
本当にコーヒーを飲むだけだと思っていたようだ。
しかも奢ると言われて、
貧乏人だとナメられたと激怒しているのがまた母らしい。
さすがにそれだけのトンチンカンな断られ方をされれば、誘われなくもなるだろう。
もしかしたらいい断り方なのかもしれない。
お母さんに気があったんだよその人。
私がそう言うと、
お母さんに??気があった???
あっはっは!!
ないない!
お母さんに???ゲラゲラ!
それはないわ!アッハッハ!!
貧乏人だと思って心の奥でずっとバカにされてたんよ!
と笑って言った。
でもそんな話は一切なかった。
母はフルタイムで仕事をしていて、
貧乏ではなかったと思う。
何故貧乏人とバカにされると思うのか、
真剣に話を聞いたが理解出来なかった。
まあそんな人なので、色んな人が母に近づいていた気がするが、
お友達で終わっていたように思う。
私の母は良くも悪くも、
言葉をそのまま受け取る人だ。
私は似なかったので、最近は母の性格が羨ましいと思っている。
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