夫が桜を見に行こうと言い、二人で見に行った。


遊歩道まではとても遠く、

急勾配の階段を登らないとダメだった。



登りきった所でふらふらになり、

少し歩いてすぐに降りた。



歩く人の足元ばかり見て、

足の不自由な人を目で探してばかりいた。



上を見れば美しい桜が満開なのに、

私は誰かの足元ばかり見ていた。



どんな気持ちだろうが、桜は美しかった。

来年はもう少し歩けるようになりたいと思いつつ、どうかなあと思う自分がいた。



夫がもう帰ろうかと言ってくれて、

次は夜桜を見に行こうと言ってくれた。



私は嬉しくなって、行きたいと答えた。



去年はもっと歩けていた。

夫もうっすら気づいたのだろう。

夜桜に誘う事で、私が気に病むのを止めたのかもしれない。



とてもいいお天気で、美しい桜を見ても、

歩けない事にばかり気持ちが行き、

そんな自分を情け無いと思った。




もし友達に同じ事を言われたら、

そんな気持ちの時もあるよね、

そうだ夜桜を見に行かない?



そう言ったかもしれない。



無神経だと思っていた夫の、

優しい一面を見た気がした。



私は夜桜を見ようよと言ってくれた夫に心から感謝した。



歩けても歩けなくても桜はいつだって美しく、

私は幸せなんだと気づいた。