久しぶりに姪に会った。
30分ほど一緒に過ごした。
人懐っこい子で、
無愛想なみかんおばさんにも、
明るく接してくれる。
姪を一言で現すと、
子供らしい子供だ。
天真爛漫。
そんな子だ。
嬉しいとジャンプして喜び、
怒ると足を慣らして怒る。
無邪気で笑顔が可愛い子だ。
姪を見ていて娘を思い出した。
娘はあまり笑わなかった。
癇癪をいきなり起こしたり、
無表情のまま何日も過ごしたり。
本を買って来たと嬉しそうに見せてくれた事もある。高校一年生の頃だ。
どんな本?と見せて貰うと、
真っ黒い分厚い本で、
タイトルも中身も全て英語だった。
何の本?と驚いて聞くと、
アメリカの有名な解剖学の権威が書いた著書であると言っていた。
娘はいつだってそんな感じだった。
私はタイトルすら読めず、
中には解剖のイラストが載っていて、
私は内心恐怖の黒い本と名付けていた。
私が高校一年生の頃、
そんな本を読みたいと思った事がなかった。
娘は幼い頃から子供らしくない子で、
いつも生き辛そうだった。
自分の前世は男性の解剖医だったと思うと、
真顔で言われた時、
娘ならあるかもしれないなと思った。
多少前世の記憶が残っているので、
この本で記憶をなぞるのだと言う。
何をバカな事をと、
笑えないほど真顔だった。
娘が言うならそうなのだろうと、
そう思わせる子供だった。
これが息子なら、
おまえの前世はカメムシやろ!
と言って、二人で笑っていたと思う。
娘はそういう子供ではなかった。
姪は良く笑う。
娘もたまにだが、笑う時があった。
私は娘の笑顔が見たくて、
見れた時は嬉しい気持ちになった。
一体どんな気持ちで幼少期を過ごしたのか、
気の毒に思う事も多々あった。
人と馴染めず嫌がらせを沢山受けた。
本人に悪気はないのだが、
女子トークが出来なかった。
娘の言葉はオブラートがないので、
きっと多くの人を傷つけたと思う。
本人は普通に生きているのに、
いきなり友人が怒り出したり、
もう付き合いきれないと離れて行ったりして、
とてもショックなのにそれを言葉にして、
口から出すことができない。
それをとても気の毒に思っていた。
もし、姪と娘を取り替えると、
ある日女神様に言われても、
震災でも連絡をよこさない娘でも、
私の娘なので断るだろう。
出産に1日半かかった。
必死で産み、産まれて来た。
娘が他の子と大幅に違うなどと、
ある程度まで気づかなかった。
今ほど情報が手に入る時代だったら、
もう少し娘の苦痛を減らす事が出来たかもしれない。
娘の中には、他人より優れているという自負と、
他人に出来る事が自分に出来ない劣等感が、
いつもシーソーのように行ったり来たりしていた。
娘には自分らしく生きれば良い、
みんなと同じでなくて良いと言い続けた。
お陰で親が震災に遭っても連絡をよこさない、
自分らしく生きる人間になった。
私の子育てが正しかったのかと聞かれれば、
正しくはなかったと答えるだろう。
心から愛していたが、うまく伝える事が出来なかった、そう答えるだろう。
私の愛は深く重く、
もうこれ以上誰かを愛する事は無いだろう。
祖母が私を愛してくれたように、
私も娘を愛した。
私はもう祖母と一緒にテレビを見れないし、
娘と一緒に買い物にも行けない。
それはとても寂しい事だけれど、
それも人生と受け入れて、
目の前の幸せを見つけては、
楽しく生きなければと最近は思っている。
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