先日人生相談を聞いていると、

60代かな?主婦の方が電話をかけて来た。


ざっくりまとめると、

夫が病気になった。命に関わる病。

妻は夫を愛していた。

夫は病室のベッドで、家の中にある箱の中身は見ないでくれ、と頼んだ。

優しい真面目な妻は、中身が気になって開けてしまった。


中には沢山の女性と関係した写真や手紙が大量に出て来た。人妻も沢山いた。


妻は夫に中を見てしまったと言うと、

酷いと夫に言われ、酷いのはあなたよと言った。


その後亡くなったが、愛している反面、

許せない気持ちが数年続いているとの事。


この悩みにナントカ研究家の方が、

あなたの為を思ってとの前置きの後、

奥さんの行動を責める。


なぜ箱を開けたのか。

何故夫を責めたのか。

酷いではなく悲しいと伝えるべき。


などなど矢継ぎ早に言い、相談者は泣き出した。



言いたい事は分かるが、

真面目に夫だけを愛してきた妻の為に、

いつまでも箱を取って置いて捨てない夫に落ち度は全くないのかと思う。

私が相談者なら言い返していただろう。



自分に置き換えて想像するだけでも辛い。



そもそも幼児研究科って、

死別した妻にごちゃごちゃ言えるほどそう言う方の心理に詳しいのだろうか?



見るなと言われたら見たいだろう。

本当に思いやりがあるのであれば、

病になる前に夫が捨てるべきだったと思う。



奥さんを愛していたのは間違いないだろう。

それにしても勝手な話だ。



話は飛ぶが、私は夏になると良く蝉を見る。

いつ頃地面から出て来てどこでどんな風に羽化するのか、この地に引っ越してから良く分かるようになった。



もし私が蝉の研究家だったら、

蝉について沢山研究するだろう。

本も出すかもしれない。

知識も蝉に関しては豊富になるだろう。

図鑑を作る時に声がかかるかも知れない。



でも、それって私から見た蝉の生態であって、

蝉が何を考えているのかまでは分からない。



8年も土の中にいるが、

本当は土の中の方が居心地が良いかもしれない。



幼児研究家も、研究家なのであって、

世の中の子供の気持ち全てを代弁出来るとは思えない。

ましてや夫婦関係について、離婚専門のプロの弁護士でもないし、カウンセラーでもない。



なのに頭ごなしに旦那様を責めるなんて、

あなたは酷い人だと言われて泣く相談者。



そうかな?



責めるでしょう?



思いやりがなくて酷いのは旦那でしょう?



された側はたまったもんじゃないですよ。



死に際に会わない妻だって沢山いますよ。



ずっと憎んでいると苦しいだろうから、

そうならないように考えてあげれば良いのに。



こんな酷い目に遭って、更に責められるって、

きついと思うなあ。



研究家の方も仕事で良かれと思って言ってるのだから仕方ないのだけれど、

私が悪かったと今度は自分を責めて、

メンタルが病んでしまうのではと心配になる。



本人を責めるのは相談の中で一番簡単だと思う。



私なら同じ立場だったら同じ事をしていたと思う。それでも夫を看取ったあなたは素晴らしいと思う。憎いだろうけど、愛していた気持ちは本物、

時間が心を癒してくれるまで、慌てず自分の辛さを認めてあげてと言うだろう。



箱を開けなければ苦しまなかったのですから、

などと言われていたが、余命僅かの夫に、

あの箱は見るなと言われたら、

真面目な妻なら開けるだろう。

中にそんな物が入ってるなどと誰が思うだろうか。



幼児研究家だの心のエッセイストだの、

悩める母親に文句ばかり言うが、

母親研究家や母親の心のエッセイストはいないのか。



母親もかつては幼児だったのだ。

何でもかんでも女が悪いと言うのは辛いなと思う。


私が娘の事を相談したらボコボコに言われるだろう。じゃあ私が親から受けた仕打ちは誰が救ってくれるのか。そんな人はいないのだ。



こちらの過ちや落ち度だけを責められても、

何にも解決などしない。



浮気されて十分苦しんだ人に、

追い討ちをかけるような言葉は辛いと思う。

子供に縁を切られた母親を責めるのも違うと思う。


そんな事をぼんやり思う、雪の午後でした。