前回のお話↓
nino side
ｎ「くっそ、帯の正解ってどれだよ」
このままじゃ約束の時間に間に合わない
あんまりカッコつかなかったけど、適当に浴衣の帯を結んで俺は部屋を飛び出した
最近ずっとゆるい部屋着で過ごしてたから、浴衣なんて窮屈で少し照れる
俺は別にＴシャツにジーンズでいいんだけど 相葉くんは毎年必ず浴衣で来るから
まぁ 並んだ時にさ、見栄えがいいじゃん？
普段着と違ってちょっとデートっぽいしさ
翔くんが祭りに行けないって聞いた時 俺は密かにガッツポーズした
多分… あの二人は恋人になる
それはきっと時間の問題だから
俺が相葉くんの一番近くにいる、その束の間の時をもう少し楽しんだっていいだろ
ｎ「相葉くーーーん」
ああ、やっぱり怒ってる
どうやって機嫌直してもらうかなー
ａ「もうっ 早く行くよ！」
俺を引っ張るその腕はよく日に焼けていて 微かに太陽の匂いがした
相葉くんだって上手に浴衣を着れてるわけじゃない
だけど目一杯 祭りを楽しもうっていうその心意気がさ、俺は好きなんだよね
俺の隣で相葉くんが笑ってる
それが俺の幸せ
そのうちその時間が翔くんに奪われていくんだろう
正直腹立たしい
だけど相葉くんが翔くんの隣でとびっきりの笑顔を見せるなら それが一番いい
笑ってるあなたを見るのが
俺は好きなんだ
俺が遅れたせいもあって 祭りのメインイベント 花火の時間が差し迫ってた
別行動なんてあんまり乗り気じゃなかったけど、俺と相葉くんはお目当ての屋台に分かれて食べ物を調達した
このあとの時間を楽しむためにね
毎年あの場所で二人きりで見る花火が俺は好きだった
ーーー昔を思い出すんだ
お互いが世界の全てだった あの幼い頃を
あなたが漫画に夢中になってる時も
花火に目を輝かせてるときも
俺はいつだって あなたの横顔を見ていたよ
今年はもう諦めていたのに、そのチャンスがやってきたんだ
俺は嬉しくてニヤける顔を腕で隠しながら チョコバナナを買いに走り出した
ｎ「あっ すみません」
人混みで 俺より少し背の高い男性に肩がぶつかった
見上げながら軽く会釈すると、その男の顔がこわばった
ｎ「…えっ」
なんでここに居るの？
m「あ！にの！来てたんだー 相葉くんと？」
隣には松潤がいる
どういうこと？
用事があって来れないんじゃなかったの？
だから相葉くんの誘いを断ったんじゃなかったの？
なんで松潤と来てんの？
松潤と来るんだったら いつも通り四人で来てもよかったんじゃ…
ｓ「にの」
痛いくらい手首を強く掴まれて ハッとする
ｓ「相葉くんには黙ってて…頼む」
…なに 言ってるの？ 翔くん
耳元で囁かれた言葉が 頭の中を何度も駆け巡る
m「翔くん 急がないと花火始まっちゃうよ！」
人混みに流されそうになった松潤が 翔くんの手を握った
翔くんはそれを振り払わなかった
俺のことを一目見ると そのまま松潤と一緒に人混みにまぎれて消えていく
なにやってんだよ、あの人
なんで相葉くんをほっといて 松潤と会ってんの
''相葉くんには 黙ってて…''
俺があんたのために 相葉くんに嘘つくとでも？
ふざけんなよ！
俺は相葉くんのもとへと走った
慣れない下駄で何度もつまずきながら 暗い坂道を駆け上がり 相葉くんの待つ丘へと走った
ｎ「ﾊｧ…ﾊｧ… 相葉くん…」
ａ「にの！」
俺に駆け寄ってくる相葉くんが ホッとしたような顔をする
相葉くんの後ろで揺れる黒い影が、恨めしそうに こっちを見ていた
ｎ「…なんで あんたがここにいるんだよ」
ｎ「まだ相葉くんに 未練があんの？ いい加減にしろよ」
ａ「にのっ」
ｔ「やかましいのが 帰ってきちゃったな」
ｔ「相葉ちゃん、櫻井とうまくいかないときは いつでも俺に相談してよ。二宮じゃなくてさ」
そう言って微笑むタッキーを 俺は黙って睨みつけた
ｔ「じゃあね」
相葉くんの肩に触れるその仕草は友だちのそれじゃなかった
………イライラする
滝沢も
翔くんも
なんで相葉くんはおまえらなんか好きなんだよ
悪い夢でもみてるみたいだ
ａ「にの？ なんか怒ってる？」
ｎ「…おまえも悪いんだからな」
ａ「え？」
ｎ「別れたやつに隙なんか見せんなよ。だから触られたりするんだよ！」
ａ「…っ… そんな言い方しなくたっていいだろ。何イライラしてるか知らないけどさ」
言わないなんて選択肢は俺にはなかった
ｎ「翔くんが いたよ」
ａ「えっ…」
ｎ「祭りに来てたよ、松潤と二人で。相葉くんに嘘ついてまで 二人で来たかったんだろ。楽しそうに手繋いで歩いていったよ」
ａ「…何言ってるの？にの。翔ちゃんは今日は用事があって来れないって…」
ｎ「だから！嘘つかれてたんだよ！！」
ａ「…」
ｎ「あいつは…翔くんは、相葉くんにも松潤にも思わせぶりなことしてたんだよ。それで大野さんのことも引きずってるとか…結局誰が好きなんだよ。本気で好きなヤツなんていないんだろ。」
俺だったら…
俺はずっと…
これからも ずっと…
相葉くん一筋なのに
ａ「…にの、本当に翔ちゃん 松潤といたの…？」
ｎ「俺が相葉くんを傷つけるような嘘つくわけないだろ」
ａ「うん…」
相葉くんの瞳からこぼれ落ちそうな涙を 指で掬う
やめときなよ、あんなヤツ
俺の方が あいつより 相葉くんのこと…
俺はね、あなたに笑っててほしいんだ
だから…
あなたを悲しませるようなヤツは
絶対に許さない
ｎ「相葉くん」
ａ「っん… ありがと にの」
頬をつたう涙を 俺は指先で静かに拭った
ｎ「俺にしときなよ」
ａ「…っ にの…」
翔くんには… 渡さない
つづく。。。