私はこの作品が心底好きなので、
私なりに感じたとおり、考えたとおり、作品の良さについてできるだけ具体的に、
わかりやすく書いていきたいと思います。
できれば100コ!そういう企画です(`・ω・´;)
基本的に、この企画は(勝手にやっているのですが)ネタバレを前提、
作品を見ている人を前提としていますので、ご承知の上でよろしくお願いします。
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●花が妊娠したときに、彼が桃の缶詰を持ってたわけ
~不老長寿の桃~
花の妊娠がわかったとき、彼は全速力で走っていました。
その両手には、桃の缶詰が。
…彼、何故桃の缶詰を持っているのでしょう。
花の好物だったでしょうか?(そういうわけではなさそうです)
ただ、古来中国では、桃は邪気を払うものとして
不良長寿の象徴とでもいうべき力を持っているとされたそうです。
それを考えれば、桃を持っていてもおかしくはありませんね。
彼なりに栄養価と風習を考えてみた結果なのでしょう。
何故桃でなくてはいけないのか、ということを考える時に、
他の物に置き換えてみたらわかりやすいと思います。
彼の両手にあったのが、パイナップルの缶詰だったら…?
みかんだったら…?
やっぱり桃の方が良いかもしれません。
●おみやげみっつ、たこみっつ
~不思議な言葉の力~
サマーウォーズの「コイコイ! 」もそうですが、
呪文のような、特殊な言葉の持つ魔力を感じます。
「おみやげみっつ、たこみっつ」は調べてみると 童謡の一部らしいですね。
本来持っている意味は童謡の一部のようですが、
この言葉が作品の中で持つ意味について考えてみますと、
作品の看板の一つとでも言いましょうか、
愛着の目印になる意味をもつと思います。
ついつい声に出したり、作品を見た人と共有したくなる言葉ですよね
(ポニョ、も似たような感じです)。
雪が初めて学校にいくときに、ずーっと唱えていたのが印象的です。
子供は気に入った単語を繰り返しますよね。
それが高学年になっても、彼女のお守りになっていたわけです、
痛いの痛いの飛んでけ、のように。
●小学校でおおかみの姿になったことは世界の終わり
~母子の脆い世界~
おおかみになって、草ちゃん(同級生)を殴ってしまったことは、
雪にとっては世界の終わりに等しいことでした。
このままでは学校にいられなくなる。
おみやげみっつ、たこみっつも効かなかった。
田舎であり、母子三人であり、小学生であり、
おおかみこどもである雪は閉鎖された世界を生きています。
もし草ちゃんがほかの人に言いふらしでもしたら、
学校に通えなくなることは明白です。
校長室で、親を交えて謝ってるシーン、
草ちゃんが言った「おおかみがやった」という一言を聞いたときは、
私は、花同様に息を飲みました。
頭を下げているその時の花の演技が素晴らしいです。
都会を離れてやっと軌道に乗った田舎の暮らし、
学校での生活が音をたてて壊れた気がしました。
あのシーンでは、視聴者は完全に花と同じ心境でした。
その後、車の中で、雪が泣いているのを抱きしめる花、
とてもか弱く、一歩間違えれば人とのつながりを無くしてしまう、
そういう脆い世界に親子が生きていることを表しているようでした。
もっとほかにも選択肢があったかもしれません、
しかしおおかみこどもであるがゆえ、
人間として生きていくにはひっそりと、
おおかみであることを隠して生きるしかないのでしょう。