【母へ】

私は母が嫌いだった

たとえば

母は私にたくさんのお金をくれた

けど

私の心は一顧だにしなかった

ほんとうに

母の分析する私は

驚くほど

すべからく

私から

外れていた



お金で私の心を買おうとしている

そう思った

私はそのお金を

友人に使ったり

使わない問題集を買ったりして

浄化した

当然、理解できない母は怒って

お金の使い道をはじめ

友人の素性

学校の机の引き出しの中まで

私の全てに干渉するようになった



どれくらい月日が過ぎたのか

永遠に続くと思っていた拒絶の中で



ふと

年老いた鳥が

それでも

子供をのせて

飛ぼうとしているビジョンがみえて 




ねえ

私たちは

産まれた時から

もう

自分で飛べるんだよ

その羽を信じてないの?


私に

身体を与えてくれた

それで

もう十分です


そして

私も

ごめんね

あなたが飛べるって

信じてなかった 

あなたの寂しさに

付き合うふりをしてたかな



一緒には飛べない

私達は

一人で飛ぶの

一人で飛べるの

 

だから

どうか

私を連れて飛ぶことに

いのちを使わないで 


私がいなくても

あなたは

飛んでいい

私を置いて

飛んでいいんです

どうか

自由に飛んで 
 
まだあなたは飛べるって

私は

信じてます


私は母を

好きにはなれない


でも愛してる


水上  宙

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