また夏が来る。
あの忘れたくても忘れられない夏が。
それからの夏を体感温度は下げることなく心だけを冷やしてしまうようになってしまっていた。
私は、人を疑うということを知らないまだまだ世間知らずだった。
人間界のみならず、この地球の生物界において。
そんなある夏。
図書館で友だちになったミキと意気投合し、小旅行に出ることになるほど仲良くなったのだった。
ミキとの出会いを回想する。
ミキは長い巻き髪のこギャルあがりで。
私も、こギャルあがりだったのだが。
こギャルあがり。
そんな形容詞があるのかどうかもわからないが。
今は、こギャルを卒業し、もうこギャルではないということだ。
ただ、ミキはまだこギャルのおもかげを残していた。
小麦色の肌に、目のフチを白く塗りたがるメイク。
親近感を覚えた。
まるで、ずっと以前からの友だちだったかのように。
私は、図書館の机で専門学校の夏休みの宿題をしていた。
あっ!消しゴム忘れた〜。
思わず出たひとりごとに。
隣にいたミキが消しゴムを差し出してくれた。
これが友だちになったきっかけだった。
ギャル文字からまだそこは卒業できずにいた私に、ミキが私のノートをのぞきこんで言ったのだ。
『この文字可愛いね!ねぇねぇ。友だちになってよ。わたしミキ。よろしく。』
ミキの突然の友だち申請。
驚く私に。
ミキはカラーペンでパンパンのペンケースから消しゴムを取り出しこう言った。
『この消しゴムまだまだあるからあげる。もらって。』と。
くったくのないそのミキの笑顔に、私は『あ、ありがとう。私はチェキラ。よろしくお願いします。』
名前を二度聞きされて。そんな状態に慣れっこの私は、ノートに名前を書いて説明した。
知恵気楽と書いて
チェキラ。
親もとんだDQNネームをつけてくれたものである。
父はラッパー。母は元落語家。
そうすると結果こうなった。
『親はラッパーとか言わないよね?』
ミキのツッコミに思わず大笑いしてしまい、まわりからじろりと見られた。
どうして、ラッパーだとバレたんだろ。
ドキドキ💓冷や汗。
顔を見合わせ笑いをこらえる二人。
私はそんなミキのくったくのなさがますます気にいってしまった。
ミキはニコニコしていた。
ミキには笑顔が似合う。
小麦色の肌に白い歯。リップも可愛いかった。
図書館の帰り道。
コンビニで買ったアイスを二人で食べた。
公園のベンチで。
夜の7時頃には、やっと夕暮れて一番星が空に顔を出した。
映画の話やメイクの話に夢中になっていたら、もうこんな時間になっていた。
公園を出てしばらく道路沿いを並んで歩いた。
交差点で別れた時、振り返るとミキはいつまでも手をふっていた。
友だちができた嬉しさに、私は心を躍らせていた。
ミキとは仲良くしたい。
ずっと。
つづく。![]()
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