こんな夢を見ました。

パリの夜。にぎわいにつられて、ある店に入った。
そこは、高級アイスクリームの店だった。大人気で、店内は順番待ちになっている。

ようやく私の番がきて、通されたのは、一人の日本人女性との相席。
混んでるから相席もしかたないか……と思い、評判のアイスクリームを注文する。
もうじき奥さんもくることになっていたので、二人で食べようと思っていた。

まもなくアイスクリームが運ばれてくる。うわさにたがわず、とてもおいしそう。
ところが、そこに支配人風の男がやってきて、こう言った。

「お客さま、このアイスクリームは17万ドルですが、それでもお食べになりますか?」
彼は、当初フランス語で値段を言ったが、フランス語はわからないというと、英語で「17万ドル」と言い直したのである。

私は、一瞬、わからなくなった。
「つまり、170万円ってこと?」
「いいえ、1700万円でございます。」

「食べるよ。」
思わず、そう答えてしまった私。
その瞬間から、1700万円の借金を抱えることに。
ほどなく、妻がきた。

……………………

この夢は、なぜかリアルで、目が覚めてからも、「1700万の借金!どうしよう……」という思いがしばらく尾をひいた……

パリのテロのことが思い出された。

TVで、今回のテロで妻を亡くした男性の文章が紹介されていた。文章は、テロリストに呼びかけるかたちで、次のように書かれています(かなり重要な内容なので、全文を紹介します。なお、文中に「メルヴィル」とあるのは、劇場で射殺された彼の妻との間のこどもです)。

…………インターネットより、フランス語原文を日本語訳にした文章を引用…………

あなたたちは私に憎しみを抱かせることはできません。

13日の夜、あなたたちは特別な人の命を奪いました ―― 私が生涯をかけて愛する人であり、私の息子の母親です。 しかしあなたたちは私に憎しみを抱かせることはできません。私はあなたたちが何者かを知らないし、知りたいとも思いません。あなたたちは魂を失った人間です。彼のためには殺人をもいとわないほどにあなたたちが敬っている神が自分の姿に似せて人間を創造したのだとしたら、私の妻の体に打ち込まれた全ての銃弾は、彼の心を傷つけたでしょう。
私はあなたたちの願い通りに憎しみを抱いたりはしません。憎悪に怒りで応じれば、今のあなたたちのように無知の犠牲者になるだけです。あなたたちは私が恐れを抱き、同胞に不審な気持ちを持ち、安全に生きるために自由を失うことを望んでいる。あなたたちの負けです。
今朝、私は彼女に会いました。この数日、ずっと待ち望んでいた再会です。金曜日の夜に外出した時と同じように彼女は美しかった。12年前に私を夢中にさせた時と同じように美しかった。もちろん私は痛みに打ちのめされています。その点については、あなたたちは少しは勝利をおさめたのかもしれない。しかし痛みは長くは続きません。彼女はこれからも私たちと共に生き続けます。そして私達は再び自由に愛しあえる楽園で会えるのです。そこは、あなたたちが入れない場所です。
私と息子は二人きりですが世界中のすべての軍隊よりも強い。これ以上あなたたちのために使う時間はありません。メルヴィルが昼寝から目を覚ましたので、彼のところに行きます。彼は生後17カ月。普段通り食事をし、私と遊び、そして幸せで自由な人生を過ごすことで、あなたたちに勝利するでしょう。彼もあなたたちに憎しみ抱くことはありませんから。

…………掲載元:http://www.huffingtonpost.jp/2015/11/18/husband-of-paris-attack-sends-message_n_8589032.html…………

私は、この文章に、共感できるところとできないところがあります。

共感できるのは、やっぱり突然奥さんを亡くした悲しみ……ですかね。あと、「彼のために殺人をもいとわないほどにあなたたちが敬っている神が自分の姿に似せて人間を創造したのだとしたら、私の妻の体に打ち込まれた全ての銃弾は、彼の心を傷つけたでしょう。」というところ。いかにもフランス人らしいもってまわった言い方ですが、ここは、キリスト教とイスラムの神が「同じ」である……つまり、彼らは同一の神をいただく「近い文明」であることがよくわかって興味深い。

で、共感できないところは……
「私はあなたたちが何者かを知らないし、知りたいとも思いません。」
「私はあなたたちの願い通りに憎しみを抱いたりはしません。憎悪に怒りで応じれば、今のあなたたちのように無知の犠牲者になるだけです。」
「彼女はこれからも私たちと共に生き続けます。そして私達は再び自由に愛しあえる楽園で会えるのです。そこは、あなたたちが入れない場所です。」

そして、結びの文章。
「私と息子は二人きりですが世界中のすべての軍隊よりも強い。これ以上あなたたちのために使う時間はありません。メルヴィルが昼寝から目を覚ましたので、彼のところに行きます。彼は生後17カ月。普段通り食事をし、私と遊び、そして幸せで自由な人生を過ごすことで、あたなたちに勝利することでしょう。彼もあなたたちに憎しみを抱くことはありませんから。」

こういう文章。フランス人、タカビーやなあ……と思います。こんなこと言っとるからやられるんや!なんていうとお叱りを受けるかもしれないけれど、率直にそう思う。パリのアイスクリームは、実際には1700万円ってことはないでしょうけど、でも……もしかしたらホントは「そうなのかもしれない」と思うとゾッとします。

文明の享楽……自由で楽しい生活……しかし、あなたがその生活を無意識に楽しんでいるその底に……はたしてどれだけの人々の、存在の、「終わることのないあえぎ」が積み重ねられているのか……この、妻を失ったフランス人男性の文章には、そこにたいする「毛ほどの気づき」もみられない。それって、基本的にアカンのでは……

アメリカの同時多発テロのときも、「罪もない人々が……」という言葉がよく使われた。でも、ホントに罪がないんですか? たくさんの、たくさんの人々のあえぎを踏みつけて達成されている「自由で楽しい生活」……そこに対する意識がまるで欠落した状態で、「あなたたちは私に憎しみを抱かせることはできません。」……よく言うなあ……

この問題は、「人間」の間の格差の問題はもとより、「人間」と「人間以外の存在」の格差の間にまで意識が行ってしまうと、もうどうしようもない膨大で悲惨な話になってきます。埴谷雄高氏の『死霊』は、そこを指摘しようとしていたけれど、結局相手がデカすぎて未完のままに作者はお亡くなりに……これはもう、ホントにどうしようもないのでせうか……

ネットでは、あらゆる画像をトリコロールにするのがはやっていて、ソレに対する賛否両論が渦まいているといいます。共感する人、反発を覚える人……しかし、実際には、トリコロールの「自由」には、その底に「ものすごい悲惨」が積み重ねられているのは、それは確かなことでしょう。人類は、どういう「選択」をするんだろうか……それとも、選択は、すでに「終わっている」のでしょうか……