野外活動研究会の人たちと一緒に、愛知県東海市の名鉄太田川駅近辺を歩きました。
野外活動研究会というのは、今からもう40年も前に自然発生した、名古屋市と近辺に住む若者たちの集まりで……いろんなところを歩いているうちに、月日は流れ……今ではほぼ、中高年の集団に……まあ、若い方もおられますが、平均年齢はスゴイです。でも、スゴイわりに死者は少なく、かつての若者たちが集まって今も若者のようにウロウロといろんなところを歩く……歩く……ただ、ひたすら歩きます。
ということで、この間は、真っ青な空が抜けてカリフォルニアのピーカンの日曜に、名鉄太田川駅周辺から尾張横須賀駅まで歩きました……中高年ですが、歩きなれてる人ばっかりなのでだれ一人熱中症にもならず、無事帰還できたのはメデタイことでした……名鉄太田川駅のある東海市は、愛知県の知多半島の付け根のところにある街ですが、ここは、かつては風光明媚な白砂青松の地……
だったかどうかは、その頃を直接知らないのでよくわかりませんが、今はもう、「海岸線」はありません。というか、かつての砂浜の海岸線に接して巨大な埋め立て地ができて、そこには華麗なる?工場群が……ということで、街は工場に封鎖されて……こういう場合、どういう言葉を使ったらいいのかわかりませんが、思わずしらず「御愁傷様で……」という言葉が出てきます。それくらいあわれな……
街って、それぞれの街に、やっぱりいちばんいい「すがた」があると思うんですね。知多半島は、かなりの部分が三紀層という比較的固い地盤からできていて……これは、絶対年代では6430万年前から260万年前ということですが、この時期の終わりに、この知多半島を含む伊勢湾と濃尾平野の大部分は「東海湖」と呼ばれる大きな湖の湖底になっていて、そこに堆積した地層が隆起して……
まあ、いろいろ複雑な変遷はあったと思うんですが、今の知多半島のかたちになった……縄文海進期は今よりさらに海が奥まで入りこんでいたと思いますが、その後、地球の寒冷化によって海は少しずつ退き、知多半島は、三紀層の骨格に、海沿いの砂浜……という地形になった……そういうことではないかと思います。ところが、近年、おそらく昭和に入ってから、名古屋港の埋め立てが進み……
それは、連接する知多半島にも拡大して、白砂青松の砂浜に巨大な埋め立て地が形成され、この地は、いのちともいうべき「海岸」を失いました。かつては、人々が漁業で生計をたて……あるいは良港の利を生かして廻船業も盛んだったかもしれません。そして、おそらくは名古屋や岡崎からの観光も……夏になると、知多半島の砂浜は海水浴のお客さんたちであふれた……
砂浜を埋め立て、コンビナートを建設していくその圧力は、きっとものすごいものだったのでしょう。今も、その「ツメアト」は街の各地に見られます。だいたい、街自体が「なにをやりたいのか」まったくわからないうちに、埋め立て地の工場から落ちるお金で道をつくり、団地をつくり、ハコモノを増殖させ……名鉄太田川駅に降り立ったとき、「なんにもないところにきた」と思った……
それくらい、もうなんにもない感じ。その日はちょうど隣町の尾張横須賀のお祭りで、古い街並を山車が練り歩き、屋台がならんでお客さんがいっぱい……ふだん山車を保存しておく山車蔵の立派さが印象的でした。うーん……きちっと調べてみなければわかりませんが、やっぱりあれだけ立派な山車蔵を造るにはかなりのお金がかかってるんだろーなー……そのお金はどっから出たのか……
街の骨格ともいうべき「基本的なすがた」を失ったかわりに、もし立派な山車蔵が得られたのだとしたら、それってどうなんでしょうか……街は、そこに立ったとき、立っただけで、もうかなりのことがわかります。幸せな街なのか、不幸な街なのか……そこに住む人は、あるいは幸せだというかもしれない。また、ある人は、不幸だというかもしれません。しかし、地の神はどう思ってるのか……
地の神の心……いろんなところへ行くと、やっぱりソレを感じます。この地の、地の神は、今、幸福だろうか……不幸だろうか……今までで、私がいちばんびっくりしたのは、やっぱり越前の敦賀の街でした。敦賀の地の神様である気比の大神をお祀りする気比神宮……ここへお参りしたときのショックは、前にも書きましたが……大岩に押し潰された気比の大神の苦しみがダイレクトに伝わってきて……
私は、あのとき、自分自身の身体と心で、「ゲンパツ」というものの本当のオソロシサを知ったんだと思います。すべての「生命」を圧殺していくあのオソロシイ19世紀の悪魔の発明……これはもう、「地球」自体に対する挑戦であって、この魂の場、いのちの場そのものを巨大な力で押し潰す……ここからはもう、なにも逃れられないし、なにも生まれない……ほんとの闇ってこんなもの……
東海市の太田川の周辺を歩いていても、やっぱりこのオソロシイ「力」は常に感じました。ここにはゲンパツはないし、もうけっこう古くなってまわりにもなじんじゃってる工場が並んでるだけ……なんですが、街の軸は狂い、散漫になって、土地がつくりだす、人の生活をそっと包んでくれるような平和な感じがない……金の力……これは、オソロシイです。ぜんぶ、壊してしまう……
金の力にとらわれた人は、獰猛に、凶暴になります。燃えたぎる油ぎった憤怒の炎が全身から噴きだして、あぶなくて近寄ることもできない……合法的に、そういう力は、人の生活を壊し、地の神を圧殺して世界を破壊していく……今、イスラム国にリクルートされた日本人若者のことが話題になっていますが……それって、トンデモナイことに見えるけれど、ホントにそうなの?
今、この日本という国土、山河は、金の力によって荒れに荒れ、かなりの部分が狂いはじめています。もう、こんな国には夢も希望も持てない……そう感じる若い人が、「神のもとにはすべてが平等」であるイスラムの世界に惹かれる……そういうことがあるとしたら、それもムリからぬことではないでしょうか……この国がダメになるとしたら、それは、山河と地の神をとことん痛めつけたから……
土地の持っているすなおな「気」を、慎重に扱ってそれを整えていく……人間の持っている土木力は、そういうふうに使わないと、ホントにタイヘンなことになると思います。はるかな過去に絶滅した植物の身体を燃やして土地の姿を変えていく……もし、人間が「地球の心」であるとするならば、その選択は、必ず「地球の死」に行き着くしかない……地球は、自殺を考えているのでしょうか?
私もクルマに乗って電気を使ってるので、おんなじことをしているワケだけれど、でも、やっぱり「地球の心」としては、「自殺したい」とは思っていません。というか、むしろ、きちんとやってまともな生活をしたい……と、そう思ってます。人類は、「地球の心」である以上、これから、ものすごく大きな曲り角を迎えざるをえない……なぜなら、地球は、「自殺」を考えてはいないから。
ピーカンの太田川フィールドワークで見たこと、感じたこと……このオソロシイ流れをなんとかしたいなあと思います。いろんなところを見れば見るほど、「土地の気にすなおにしたがう暮らし」というものがあるはずだという気がしてくる……それは、その地の「神社」にふつう、最もよく表現されているわけですが……地の神々は、どう思っておられるのでしょうか……
この写真は、名鉄太田川駅を300mくらい西に行ったところで西、つまり伊勢湾方向を向いて撮ったもので、ビニールハウスの並ぶ向こうに見える林が、おそらくかつての海岸線付近だと思います。今は、林の向こうに国道247(西知多産業道路)が通り、太田川のなれのはての掘割をはさんで、幅が2kmもある広大な埋め立て地が広がり、海ははるか、その先にまで追いやられています。
この埋め立て地は、名古屋港の埋め立て地の中では最大クラスの面積を持っていて、「東海元浜埠頭」という名がついているようです(住所でいうと、東海市東海町5番地)。北半分が昭和37年~46年(1962-1971)に、南半分が昭和47年~56年(1972-1981)に埋め立てられ、新日鉄、新日鉄住金、黒崎播磨名古屋、大同特殊鋼などの工場が立地しています。
http://www.umeshunkyo.or.jp/209/271/01L.jpg
http://www.umeshunkyo.or.jp/209/271/data.html
日本の港といえば神戸、横浜で、名古屋港をあげる人はすくない。というか、「名古屋に港ってあったの?」というくらいの認識ではないかと思います。しかし……実は、名古屋港は、総取扱貨物量(2億824万トン)、貿易額(16兆3103億円)、貿易黒字額(5兆8064億円)がいずれも日本一……数値は、平成25年確定値とのことですが、総取扱貨物量が2億トンを越えるのは名古屋港だけ……
この総取扱貨物量の日本一は平成14年から12年連続で記録更新中だそうです。そして、臨港地区面積(陸域)も、4214万8千平米でこれも日本一……この「臨港地区」というのは、港湾管理者(名古屋港の場合には名港管理組合、実質的には愛知県と名古屋市)が「水域と一体的に管理運営する必要がある水際線背後の陸域」を都市計画に基づいて指定したものだそうでして……
この「臨港地区面積」のほとんどは埋立地ということになるから、名古屋港は日本一埋立地の多い港ということになるのでしょう。その様子は、以下のPDFファイルで見ることができます。
http://www.port-of-nagoya.jp/adm.bak/kisei/zentai.pdf
これで見ると、東海市、知多市の海岸は、ほぼすべてが「工業港区」になってるのがわかります。
この様子を、例えば神戸港なんかと比べてみるとよくわかるのですが……
http://www.city.kobe.lg.jp/information/committee/port/preservation/img/38rinkouhenkou.pdf#search='神戸港+臨港地区'
神戸港は、六甲アイランドやポートアイランドがあって、いかにも埋立地の多い印象がありますが、臨港地区の総面積は2107万4千平米(2107.4ha)で、名古屋港の臨港地区面積の約半分……
しかも、六甲アイランドなんかは、ほぼ全域が学術研究、商業、そして居住区だから、「工業港区」の割合はさらに少ない……要するに、名古屋港は、「港の顔をしていない港」であって、また「閉ざされた港」という言い方もできるかもしれません。つまり、純然たる「産業のための港」であって、われわれは立入ることもできず、まったく知らない場所で、知らないことが……
先頃、新日鉄住金の工場で爆発さわぎがあったことは耳新しいですが……白砂青松の海岸がいつのまにか埋め立てられて、だれも知らないうちに海岸線がなくなり、よくわからない場所がどんどん増えている……神戸や横浜みたいな「港情緒」がないというのは名古屋港の人たちも悔しがっているみたいですが、それは、なぜなんでしょうか……どこかが基本的にヘンだなあと思いますが……

