今、外を、台風がふきあれています……私の住んでいるこの地方にもっとも接近するのは、お昼すぎになるみたいですが……風に揺らぐ外の景色をみていると、ついこの間のもう一つの台風のときのことが思い出されます。台風何号かは忘れましたが……結果としては、この地方にはあまり大きな被害をもたらさなかったあの台風のとき……
私は、裏庭を見回ってました。裏庭といっても、家と崖に挟まれた1~2mくらいの通路みたいな狭いところなんですが……そこに、この家の大家さんが忘れていった農機具の赤い鉄製の車輪みたいなものが転がしてある。その一部に……ありました!ハチの巣。……私は、この何日か前に、このあたりの除草をしていたら刺された……
あのハチの、巣なんだ……こんなところに……と思ってよく見ると、直径10cmくらいの小さな巣の表面に、ハチ(アシナガバチ)がびっしり貼りついて、みんなで必死になって巣を守っています。「お!今がチャンス!」と思いました。ハチたちは、強風で飛び立つことができないから、このかたちでいるしかない……
そこへ、うちにある「強力殺虫スプレー」をぶわーっと噴射してやれば、巣ごと全滅させることができるではないか……と思ってスプレーを取りに戻ろうとしたそのとき……私の心に、真理の光、慈悲のささやきが……もう、みんなで巣を守ろうとしているそのさま(私にはそう見えた)が、あまりに必死で、けなげで……
そこへあの強力スプレーを噴射すれば、これはもう立派な「ジェノサイト」ではないか……そんなことが、はたして自分にできるんだろうか……いや、できない……ということで、私は、もうすでになすすべなくその場を立ち去ってしまった。結果としては、これがいかんかったんですが……そのときは、そうするしかなかった。
このことをきっかけに、アタマの中にいろんな妄想が湧きはじめました。今、ウクライナやパレスチナで悲惨な戦争が起こっています。いや、この2カ所だけじゃなくて世界中に……歴史的にみれば、今は一見平和なこの日本も、かつては大戦争に巻きこまれて(というかみずから参加して)悲惨な廃墟をあじわった……
こういう、「戦争のとき」の人の心の状態を考えてみると、それはやっぱり「駆除の思想」なんだと思います。「自分に、自分たちに、危害を加えてくるヤツラがいる」→「じゃあ、なんとかしなくちゃ」ということで、人は、戦いに出ていくわけだけれど……それは、「ハチに刺される」→「じゃあ、駆除しよう」と……
どこがちがうんでしょう……ということです。いつのまにか、相手を人間とみとらん。単に「危害を加えてくる人型の害獣」みたいなことかな? 今の人間の世界では、相手が人でなければ、それを殺しても罪にはならない……というか、その相手が、だれか別の人間のものだった場合だけ「所有物を損壊した」という罪になる……
自分に危害を加えようとする相手が、だれの所有物でもない場合には、それを「駆除」したとしてもそれは別に「罪」にはならない……ということで、戦争で何万人殺しても、罪にならないどころか「英雄」になったりする。日本の市街地の大空襲を指揮したルメイさんに、日本政府は、こともあろうに勲章をあげたりしてますが……
もはやそこまでいくと、これは「狂気」とよぶ以外にない感じですが……しかし、戦争に駆り立てられる人の心の根元は、この「駆除の思想」なんだなあと、私は思ったわけです。自分に、自分たちに危害を加えてくるヤツラは「駆除」してもいいんだ……人の心は、自分でもしらない間に、そうなってたりする……
私は戦争に行ったことがないのでわかりませんが、戦場で、敵とにらみあってる兵士の心境はどうなんだろうか……向こうの木の影、建物の背後にいる相手……それは「駆除」すべき対象なんだろうか……別に戦場ではなくとも、たとえば、自分の今いる街にミサイルを撃ってこようとする相手がいれば、それは……
さらにいうなら、こういう「物理的攻撃」でなくても……たとえば、経済的な圧迫とかいといろ心にかかわるものとか……領土とかになってくると、たとえば尖閣でも竹島でも私のものではないので、それを取られるとか取るとか、いまいちピンとこないわけですが……でも、いずれにせよ、どこかで人の心は「駆除」になる。
「駆除の思想」……これは、オソロシイと思います。「相手も人間じゃないか」といいます。では、人間じゃなかったら、「駆除」でいいのだろうか……自分が、自分の家族や友人がやられる場合に、そんなこと言ってていいのか……今の人の価値観は、ハリウッド的な「家族と友を守るために……」で、世界中統一されかかってる……
「家族と友を守るため」はいいんですが、では、自分や家族、友を傷つけようとしてくるヤツラに対しては「駆除」でいいんでしょうか……ブッシュ親子はそんな感じでした。オバマさんは、もう少しプラグマティックが前面に出てるような気がしますが……いずれにせよ、これは、「人間の脳」の限界なのかもしれません。
昨日、レンタルDVDで『エンダーのゲーム』というのを見ました。この映画、まさにこの「駆除の思想」について、ある問いかけを行ってる。つづきは、この映画のことを中心に書いてみたいと思ってます。
