1.9

自宅に戻ってすぐ、私の準備を始めた。

最低限必要なものをまとめて、

1日に何度も息子に電話をかけ、

出ないと不安になる。


今思えば、傾眠状態にあり、

ほぼ寝て過ごしていた息子。


複視と頭痛でコンタクトは使えなくなり、

度の合わないメガネのみ。

ぼやけた景色しか見えない中、たった1人病室のベットの上。

どれだけ不安だろうか?

入院さえできれば安心、と思っていたけれど

看護師さんだってずっとついてるわけじゃない。


突然宣告された脳腫瘍、

息子の精神状態は大丈夫なんだろうか?


なんで今だった?

せめてコロナさえなければ。


考えても考えても答えはなくて、

ただ、待つしかなかった。


せめて、と

神社にお参りに行った。

1人、駐車場で涙がとまらなかった。


1人になると、

私も不安で押しつぶされそうだった。



13日、旦那と鹿児島に向かう。

オンライン面会をして、みた息子にまた涙が出そうになった。

息子の前では泣かない。



そのあと、どういう経緯だったか、

PCR検査をしたら面会させてもらえることになった。

PCR検査の場所を探して向かったが、予約以外だめだった。

病院の方に相談して、

なんとか病院でPCR検査をしてもらえることになった。

高額だと聞いたけれど、それでも会えるなら構わない。


陰性の結果がでて、18時にやっと病室に向かう。


約一週間ぶりに会う息子は、痩せてしまっていた。

点滴はしてもらっていたがほとんど食べれていないと聞いていた。


食べれるものならなんでもいい、と言われ、

本人が欲しいと言ったのは、

みかんのゼリーとインスタントラーメン。

駄菓子のわさびのり。


病人にインスタントラーメン?と思ったけれど、

それでもいいと病院から言われ、

それとスポーツドリンクを持って行った。


それしかできない。

辛そうにする息子に、


頑張って食べて、

電話もして、

また来るから。


それしかいえない。

これ以上話そうとすると涙が出る。

ただ、手を握って、

1時間ほどだけ病室にいた。


次の日も朝から面会の許可が出た。

朝10時、今日も1時間程度。

ゼリーを食べさせた。


帰る時、


次いつ来る?


と弱々しい声で聞く息子に、


また頼んでみるね、


そう言って病室をでた。





あと10日我慢すれば

手術して、

元の息子に戻る、

そう信じて疑わなかった。