事業のこと、会社のこと、
どれだけ語れていますか?

 

商品やサービスの説明はできる。
実績や数字も、聞かれれば出てくる。


けれど、「なぜこの事業を続けているのか」「何を大切にしているのか」を、

自分の言葉で語れているかと聞かれると、
少し言葉に詰まる。言葉が定まらない。
広報やPRの相談を受けていると、そんな場面に出会います。

 

広報やPRに関する仕事で、私が確認しているのは、
まず、「どこまで語れるか」です。

 

これは、インタビュー記事や取材記事のライティングと、構造は同じです。
表に出ている情報を整理して文章にすれば、それなりに整った原稿はできます。
けれど、それだけでは、広報としては弱い。

 

プレスリリースを書くときも同じです。
新商品や新サービス、イベントの告知。
事実を正確にまとめることは前提として必要です。


ただ、読み手の心の動きを左右するのは、
「なぜ今それを出すのか」
「この会社は、どんな判断基準で動いているのか」
という背景の部分です。

 

そこが曖昧なまま文章を整えると、
無難で、どこか他人事のような広報文になります。
情報としては正しいのに、印象に残らない。
そんなプレスリリースは、決して少なくありません。

 

 

広報・PRのライティングは、文章力だけで決まる仕事ではありません。
経営者や担当者が、普段は意識せずに使っている言葉や判断を、
一度、立ち止まって言語化する必要があります。

 

私はそのとき、
「この表現は正しいか」よりも、
「この言葉は、その会社の感覚に合っているか」を見ています。
インタビュー取材で培ってきたのは、
言葉を足す力よりも、言葉のズレを見つける力でした。

「この言い回しは、ちょっと違う」
「ここは、まだ語りきれていない」
そうした違和感を拾い上げることは、
現場で直接話を聞き、感じなければできません。

 

 

広報・PRの文章は、会社の外に向けた“顔”になります。
だからこそ、
どこまで語れているかが、そのまま文章に表れる。

 

インタビュー記事も、取材記事も、
プレスリリースも、広報PRの文章も。
私にとっては、すべて同じ延長線上にある仕事です。


言葉を整える前に、
まだ言葉になっていない部分に目を向けること。

 

 

広報・PRの文章は、
どこまで語れているかで決まる。
私は、そう考えながら、この仕事に向き合っています。

先日、3人のクラウンメロン農家さんに取材したときのこと。

 

インタビュー取材をしていると、
「今は質問を変えた方がいい」と直感する瞬間があります。

 

同じクラウンメロン農家さんへの取材であっても、
その判断が必要になるタイミングは、人によってまったく違いました。

 

 

たとえば、20年以上クラウンメロンを作り続けている農家さん。
当初は「クラウンメロンを作り続ける難しさ」を軸に話を伺う予定でした。


ところが、話が進むうちに、何気なく口にした日々のメロンの“見方”や“観察の癖”に、静かに言葉の熱が宿った瞬間がありました。
その変化を見て、「今は作業の話じゃない」と判断しました。

 

そこで私は、質問の方向性を
作業そのものではなく、「どう見ているのか」に焦点を移しました。
結果として浮かび上がったのは、技術論ではなく、
長年積み重ねてきた感覚そのものでした。

 

もう1人の農家さんの取材でも、似た場面がありました。
元公務員という経歴から農家になった経緯から聞き始めた取材でしたが、
転身したばかりの頃の話をし始めた瞬間、ちょっと空気が変わったのです。

 

そこに水を向けて投げかけると、
当時の経験談が一気に具体性を帯びました。
理屈ではなく、日々の現場で積み重ねてきた実感が、言葉に滲んでいました。

 

また別の農家さんの場合は、
年間の作業サイクルを聞く流れから、
天候や微細な調整の話題に切り替えたとき、
「メロンと対話する」という独特の感覚が現れました。

 

 


こうした変化は、質問リストをなぞっているだけでは起こりません。
話し手の言葉の速度、間の取り方、
声のトーンが変わる一瞬を感じ取って、初めて判断できるものです。

こういう判断は、現場にいないとできない。
だから取材ライティングは面白いのだと思います。

 

 

インタビュー取材とは、
正解の答えを引き出す作業ではありません。
言葉の奥にある背景や価値観が、
どの瞬間に顔を出すのかを見逃さないこと。

 

 

最近は、AIによる文字起こしやライティング補助も一般的になりました。
文章を整える力は非常に優れています。
けれど、
「今、この質問はしない方がいい」
「ここは深掘るべきだ」
という判断までは、代わりにしてくれません。

 

インタビュー記事を依頼するとき、
用意された質問をなぞれるライターがいいのか、
その場で判断を変えられるライターがいいのか。

その違いは、完成した記事の奥行きに、はっきりと表れます。

 

インタビュー記事を誰に任せるかは、
何が書けるかより、取材の現場で何を見ているか。
私は、そういう基準で選ばれてもいい仕事だと思っています。
少なくとも、取材記事の質は、そこで大きく変わります。

 

インタビュー記事や取材記事のライティングは、
「録音して文字起こしすれば完成する」と思われがちです。
けれど、実際の取材現場で、インタビューライターが見ているものは、
それだけではありません。

 

確かに、インタビューや取材の仕事は
「質問をして、答えをもらい、それを文章にする」
説明としては、そうでしょう。

 

けれど、実際に取材の現場に立つと、
ライターが見ているものは、もう少し別のところにあります。

 

質問が始まる前の、張りつめた空気。
言葉を選びながら、生まれる間や沈黙。
声のトーン、表情が変わった瞬間や、
話そうとして、飲み込まれた一言。

 

インタビューの取材現場には、
文字起こしには残らない情報が、確かに存在します。

 

 

取材中、私は
「次に何を聞くか」以上に、
「どの言葉を、記事として残すべきか」を見ています。

 

事実として正しいかどうかだけでなく、
その人が、今、どんな気持ちでその言葉を発したのか。
それは勢いなのか、迷いなのか、覚悟なのか。

 

たとえ同じ内容を話していても、
言葉が立ち上がる瞬間は、その人によって違うものです。
インタビュー記事の質を左右するのは、
質問力やライティング技術だけではありません。

 

その場で何を感じ取り、
どの順番で言葉を配置するか。
取材している現場での判断の積み重ねが、
記事の「その人らしさ」を形づくっていきます。

 

 

最近は、AIを使ったライティングも一般的になりました。
情報整理や文章を整える力は、とても素晴らしいです。
私自身も、AIの助けを借りる場面はあります。

 

ただ、取材現場で感じた温度感や、
言葉にならなかった余白までは、
AIには見えません。

 

誰が、どんな空気の中で、
どんな思いで語った言葉なのか。
それをすべて引き受けたうえで文章にするのが、
インタビューライターの仕事だと、私は考えています。

 

 

インタビュー記事を誰に任せるかは、
「何を書けるか」より
「何を見ているか」で決めてもいいとすら、思います。

 

取材しているその場で、
目に見えないものに目を向けられるかどうか。
それが、記事の奥行きを決める分かれ道になるのだと思っています。

 

インタビュー記事の仕事をライターに頼んだこと、ありますか?

 


発注者さんは、まだ現物(できあがり記事)を見ていない分、
何気なく不安があって、依頼に慎重です。

 

「話はちゃんと伝わるだろうか」
「こちらの意図とズレた記事にならないだろうか」
「無難で、誰にでも当てはまる文章にならないだろうか」
ただ漠然と「ちゃんとした記事ができあがるかな」とか。

 

これは、決して変な心配ではありません。
インタビューや取材のライティングは、
「書く力」がクオリティを決める仕事、ではないからです。

 

 

取材の現場では、質問内容よりも先に、空気があります。
初対面の緊張感、言葉を選ぶ間、
話そうか迷って飲み込まれた一言。
そうしたものを、ライター側がどう受け取るかで、
インタビュー記事の方向性は大きく変わるもの。

 

質問を重ねれば、情報は集まります。
けれど、それだけでは
「今の、その人らしさ」までは立ち上がりません。

 

インタビュー対象者さんが本当に不安に感じていることは、
ライターがする質問にちゃんと答えられるかではなく、
きっと、自分の話す意図や想いを捻じ曲げずに、
余すところなく、文字にしてくれるかどうか。


取材では、予定していなかった話題から、
その人の価値観や判断基準、今まで隠れていたものが
見えてくることが多々あります。
目の前の人の言葉を、急がせずに待つ。
流れを遮らずに受け取り、あとから構成として整える。
そして、その順番を間違えない。

 

インタビューライターに求められるのは、そこだと私は考えています。

 

 

最近は、AIを使ったライティングも一般的になりました。
情報整理や文章を整えるという点では、とても優秀です。
私自身も、AIに助けてもらいます。

ただ、取材の場で感じた温度感や、言葉にならなかった余白までは、
AIではわかりません。

 

 

誰の言葉を、どの文脈で、どう残すのか。


インタビュー記事の仕事は、「文章を書く」以前に、
空気感を含めて言葉の扱い方を引き受ける仕事だと思っています。

 

インタビューを外注するというのは、
原稿を発注することではなく、
対象者の声を、誰にどう届けるかをライターに託すこと。

 

だから、不安になる。
その感覚は、とてもまっとうだと思います。

 

「インタビュー」の仕事と聞くと、
うまく質問できるか、話を引き出せるか、
インタビューすることに慣れているライターであっても、
そんな心配が湧いてくることはあります。

 

 

先日、取材させていただいた農家さん、3人。
最初にこう仰っていました。
「インタビューって言われても、何を話せばいいのかわからない」と。

 

インタビューの時が初めましての、初対面。
3人ともタイプは違うけれど、スタート地点は同じ。
ちょっと緊張した、固い空気。

 

取材する側が、この空気感に感化されると
インタビュー記事は、ここで方向を間違える。
「話してもらおう」と質問を重ねすぎると、
記事は一気に“用意された答え”で埋まってしまいます。

 

私が意識しているのは、
質問で誘導することよりも、相手が話し始めるまでそっと待つこと

 

実際、取材が進むにつれて、
3人とも少しずつ、自分の言葉で話し始めてくださって。
事実だけでなく、
家族への想い、周囲のこと、
そして、直接顔を合わせることのない購入者さんへの気持ちも。

 

その場の空気や、目に留まったもの、
何気ない一言から話が広がっていきました。

 

インタビューして記事を書くという仕事で大切なのは、
質問力や構成力だけではない。

 

相手が話したくなる瞬間を邪魔しないこと。
そして、その場で生まれた想いを、正確に文章にすること。

 

最近は、AIでライティングができるとよく言われることも。
情報を整理し、文章の形にすること自体は、確かに優れていて
私もAIの助けを借ります。

 

でも、
同じ農家であっても、
どこに価値観があり、何を大切にしているかは一人ひとり違うはず。
それは、実際に現場に行き、話を聞き、
空気を感じなければ見えてこない。

 

だから私は、
取材の場で見たもの、感じた違和感を大切にして
話を聞く。
話の流れを決めすぎず、
その人自身の言葉が立ち上がる場所を探す。
依頼があれば、その場でポートレート写真も撮る。
それも、取材で受け取った空気感を切り取りたいから。

 

インタビューも取材記事も、
ライターの仕事は「書くこと」だけではない。
誰の、どんな想いを、どの場所で言語化するのか。
そこに責任を持つ仕事だと思って、努めています。

 

 

 

あなたが今伝えたい想い、
言語化するのに、あらかじめ用意した質問の中だけで、
本当に掬い取れるものでしょうか?