すなのうた

すなのうた

皺のあるシャツと
皺のないシャツ






教室のまえとうしろの席で
野望を語っていた
あのときの名前
はじめて知ったとくり返すあなたの
すこし辛そうな
秋晴れのような黒目に
二匹の犬がうつっていて
土曜の午後が降りはじめている

三十年まえに戻るなら
わたしたちの記憶のノートにすら
書けずにいたので
はやく帰っておいでといいたい

赤い巾着に
いれていた
すこしの時間が
両手からあふれているのに
気づいていない
古い写真で
車のボンネットで足をぶらぶらさせながら
笑っているあなたの
風にこわれそうな白いたんぽぽ

ありがとうを言いわすれて
ふりかえって
眉が笑っているので
額にあたたかさが広がっていく

呼ばれてから
ふりむくまでの
秋桜のような時間に
水を遣る