むか〜しむかし。



司くんと私がまだ友達同士で、

付き合う前の話。



私の友達がバイトしてるパブに、

2人で遊びに行くことになった。



お店の中には常連さんがたくさん。

まだ高校生の私たちにはちょっと背伸びした場所だったけど、常連さん達はとってもフレンドリーに受け入れてくれた。



酔いの回ったお客さんが、

私たちにポッキーゲームをするよう、ひやかしてきた。



ポッキーゲーム、今もあるの?


ポッキーの端と端を咥えて、

ポキポキ食べてくやつ。



その場のノリで、

司くんと私はポッキーの端と端を咥えた。


そのまま行ったら、

ちゅっとキスすることになる。


あと少し〜ってとこで、私が折った。



「あ〜あ!兄ちゃん、もう少しでキスできるとこやったのになぁ。」と笑うお客さんと、

「残念ですね〜。」と愛想笑いする司くん。



私は、司くんのそんな様子をニコニコと見てた。




帰り道。



司くんに「ポッキーびっくりしたね。あのまま折れなかったら、どうしてた?」と訊いた。



「それはそれで…俺は嬉しい……かな。」



司くんが笑った。


やらしい意味の『嬉しい』ではなく、

何だかとっても好感の持てる『嬉しい』だった。




私は多分もう、

この頃には司くんのことを好きになってた。



ヒールで歩く私に合わせて、

ゆっくりの歩幅。


付き合ってないから、

触れるか触れないかの微妙な距離。



私が笑うと、

司くんも笑う。



その笑顔を、

私は『明日も見たい』と思ってた。




司くんと私の初キスは、

この時から数ヶ月後。



街灯の下、

愛しさが止まらなかった。