路は一つしかなかった
親は私財もなくその日暮らし
すれ違った身なりの良い男に声を掛けられ
親はアタシを手放した
その男が誰か知らない
ただアタシを大事にしてくれた
打つこともなく
「否」を唱えなければ
何事もない日が続いた
そんなアタシにも友達ができた
近所の女である
その女も同じ暮らしぶりだ
文字も読めないその日を淡々と送る女
アタシと同じだ
「ご飯を頂けて、綺麗な服を着せてもらって、こんな幸せはない」
アタシもそう思うが 何か飽きてきた
旅の商人が面白い話を聞かせてくれた
目を輝かせることばかり
その日からアタシは落ち着かなくなった
見たい聴きたい出かけたい
男は苦い顔をした
「そんな話を吹き込んだ奴は誰だ?」
それ以来その話はできなくなった
ため息がアタシの諦めとアンサンブルを奏でる