ゆきー 

どこいった 

お父の声が聞こえる、はずんでいる 

 

都から来た人が おめぇを迎えに来たぞ 

そう聞かされて 

裏の山に上っている 

村が見渡せた 

 

ゆきの育った貧しい寒い村だ

 飢饉で食うや食わず 

でも ゆきはここで生まれた 

 

弟や妹に慕われていたがそれも今日限り 

ゆきは買われた

 

あれから十年 

親を食わすために売りに売って身を刻んできた 

とうとう船に乗せられ言葉も通じないところへ来た 

 

一緒にきたおしのは

 帰りたいよぉ・・ 

そう言いながら死んだ 

ひと握りの髪を残して 

 

風の便りに両親の死を知った今 

自分だけのために生きて 

ここで死のうと思った

 

そして十年 

思ってもみなかったことが・・ 

流れ着いた土地が隣国と戦争を始めた 

 

ゆきはこのまま殺されてもいいと考えていた 

今更逃げて塗炭の苦しみなど、ごめんだ 

グズグズしてるうちに隣国の兵士の餌食になった 

 

男がゆきを気に入った 

ゆきは兵士につれて行かれた 

馬車に乗せられて

 

ゆきは40半ば 

白髪まじりの髪を長く伸ばし高く結い上げている 

小間使いを使う身だ 

要するに第二夫人になったらしい 

 

最近はたまにふるさとを思い出す 

貧しく狭い家、小屋としか言えないような、、それが懐かしいのだ 

水タバコを吸いながら、吐き出した煙に野焼きの煙を思い出す

 

死の床にたどり着いた ゆき

 穏やかな顔 

 

ようやくここに来たわ 

生まれた時から流れてゆく運命を持っていた 

そう 

ゆきに希望も願いもなかった 

流されるまま小舟のように進んできた 

 

今ここに最後の息を吐き出し 

深い眠りについた

享年五十三歳