「おい」・・・・ そうだった、いないんだ 加納は部屋を見回した テーブルのスマホを手に取る ・・吉岡を呼び出してやろう 朝の用事を済ますと何もすることがない いや、何もしたくない 用事はあるが、したくないのだ 「お昼でもどうですか?」 吉岡はいつも応じてくれる
待ち合わせ場所からほど近いお食事処に入る ふたりは常連だ 「寒いなぁ」 「そやねん、電気ひざ掛け買いましてん」 「暖かいんでっか?」 「ソファに座ってぬくぬくですわ」 「そらええね、わしも買うわ」 食事が終わったら近くの電器店に行くことに話は決まった
この2年ほど二人は話し相手を亡くした隙間を埋め合ってる、誰よりも気を使わず使わせず気楽に相談できる。 家族だとどうしても心配させたりするから息苦しくなる。もう気楽に生きていい年頃なのだ 寂しさにも慣れた 年の成せる技と衰えも受け入れることができる
自分が先と思ってた だから後のことは妻に任せるつもりだった 子供達と相談して、長生きしてくれと思ってた それが、あっという間に先立たれて呆然とした日々が続いた 一年も経った頃、ふと部屋を見回すと雑然としたまま 元来綺麗好きだった加納は猛然と掃除を始めた