KT's Blog

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仕事(英語・英米文化と教育学を教えています)と育児、その他趣味的なこと(読書、散歩、旅行など)について、ちょっとした観察とか調べたことを書いています。

Northrop Frye, The Educated Imagination (Indiana University Press, 1964)

邦訳:『教養のための想像力』(江河徹・前田昌彦訳,太陽社,1969年)

 

Northrop Frye (1912-91)

*写真は "Northrop Frye" (The Canadian Encyclopedia)から拝借しました。

 

原著の出版は古いのですが(1964年)、文学を学ぶ意義について関心がある方には、とても良い本です。(上に書いたように邦訳もありますが、原著者の口調などを雰囲気的なところを味わうために、原著を勧めます。)

 

著者ノースロップ・フライは、ロマン主義の詩人ウィリアム・ブレイクの研究(Fearful Symmetry, 1947)などで著名なカナダの文学研究者です。本書では、文学の価値と、文学と想像力の関係を論じています。彼によると、文学を学ぶ価値は、実用 (utility) をこととする母語の習得などとは別です。また、文学に人生への実際的 (practical) な指針を求めることは無理であるとのことです (p89)。

 

参考までに、裏表紙からの引用です:

 

What good is the study of literature?  Does it help us think more clearly, or feel more sensitively, or live a better life than we could without it?  …What difference does the study of literature make in our social or political or religious attitude?  In my early days I thought very little about such questions, not because I had any of the answers, but because I assumed that anybody who asked them was naïve. I think now that the simplest questions are not only the hardest to answer, but the most important to ask, so I’m going to raise them and try to suggest what my present answers are.

 

フライの主張をもう少し述べておくと、次のようになるでしょう:

 

文学のことばは想像力のことばであり、情報の伝達を目的とする日常の言語使用など、実際的な類いのものとは一線を画します。文学の領域において想像力が生み出すものは、科学の領域で生み出されるものとは違い、検証が必要な類いのものではありません –– 文学の世界は何でもありなのです。しかしそれは、文学が単なる願望の充足 (wish-fulfillment) にすぎないということではありません(もしそうであるなら、文学はただの夢にすぎなくなってしまいます)。文学を学ぶことは寛容 (tolerance) を促進します。つまり、他人が想像することは、自分が想像することと同じくらいあり得ることであり、また、価値があるという態度を養うのです。そして文学は、私たちが理想的な社会のヴィジョンを形成することを助け、それによって、私たちが住む現実の世界を見る視点を持つことを可能にしてくれるのです。

 

本書は原著の裏表紙にコメントが寄せられているように(上の抜粋とは別の部分です)、リラックスした雰囲気で書かれていて、分量的にも少ないのですし、もともとがラジオ番組でされた話なので、大変読みやすいです。彼の主張(上に紹介したことの他にもあります)に同意するかどうかは別にして、一教養書として読む価値ありだと思います。

 

やや学問的な英語原著に挑戦したい方には特にオススメです。

 

【以前(2011年)の書き込みに少し加筆修正して再掲載しています。】