昔懐かしい曲を投稿してて気付きましたが、それにしても昔から、洋楽曲の邦題訳で

「悲しき・・・」とか「悲しみの・・・」とタイトルを付けるのが実に多いですね。

原題や内容とは余り関係なく、イメージだけのものもありますが、これを冠すると

日本ではヒットし易いというジンクスというか、データでもあるのでしょうかね? 

今で言うと、「季節限定」「数量限定」やら「◯◯名様限り」で売るラーメンやら

食品なんかと同じような効果があるのでしょうか? 洋楽界では定番マーケティング方法の一つなのでしょうね。 

 

代表的なものを列挙すると・・・

「悲しき16歳 」 1960年 ケーシー・リンデン (ザ・ピーナッツがカバー)

「悲しき街角」 1961年 デル・シャノン (飯田久彦がカバー)

「悲しき雨音」 1962年 カスケーズ (ザ・ピーナッツがカバー)

「悲しき願い」 1964年 ベニー・ベンジャミン等作 (尾藤イサオがカバー)

「悲しき天使」 1968年 原曲ロシア歌謡 メリー・ホプキン

「悲しき鉄道員」1970年   ショッキング・ブルー

「悲しみのアンジー」1972年 ローリング・ストーンズ

何れ劣らぬ大ヒット洋楽曲! 他にも未だ未だあるでしょう。

 

そしてこの人達も! 1978年のことでした。   Eクラプトンとの共演バージョンで!

Dire Straits!!!の大ヒットデビュー曲"Sultans Of Swing"

(邦題:悲しきサルタン) そうなんですよ! 「悲しきシリーズ」の

仲間入りを果たしてしまいますが・・・

 

ああ、聴いたことあるって人多いでしょ。 大英帝国のロックバンド、1978年の

ヒット曲ですが、その頃と言えば、パンクからニューウェーブ移行への真っ只中。

シーンと全く関係ない、どちらかと言うと帝国らしいフォークやトラッドテイストのオーソドックスな音楽。 発売当初からいきなりブレークした訳ではなく、この曲を

オランダのラジオ局がオンエアし続けたことで火が付き、本国、米国で大ヒットを

記録、全世界で売れたデビューアルバムが1,500万枚を突破! 一気にスターダムに

のし上ります。

 

バンドの中心人物、マーク・ノップラーはユダヤ系ハンガリー人とアイルランド人の

間に生まれ、バンドを結成するまではカレッジの講師という風変わりなキャリア。

甘さ抑制のメロディ、フィンガーピッキングのギター、そして一聴して誰もが感じる

ボブ・ディランばりの唱法。 実際、ディランには強い影響を受けたそうですが、

その秀でた才能には他ミュージシャン達からも引っ張りだこで、先日の投稿の通り、

スティーリー・ダンの『ガウチョ』にゲスト参加した他、クラプトンとの共演や

幅広いミュージシャンとの親交を深めます。

 

さて、バンドの話に戻りますが、デビュー作の成功は彼らにとっては序章にしか

過ぎず、ここから快進撃が続きます!

79年作のセカンドアルバム"Communique"  これも良い作品です!

 

更に翌年80年には早くもサードアルバム”Making Movies"をリリース!

大ブレークのデビュー以来、楽曲的には次第に長尺で地味な作りになり、シングル

ヒットを狙うようなキラーチューンはないものの、マークの渋いライティング能力、

ギタープレイには益々磨きが係り、いつ迄経っても聞き飽きないような作品です。

 

そして、この後再び訪れる大ブレークの予兆となったこのアルバム!

82年のサードアルバム"Love Over Gold"!大英帝国アルバムチャートで1位獲得!

オープニングテューンがいきなり14分を超える大作、他の曲も平均6分以上あって

全5曲と、すっかりプログレ仕様の如き構成ですが、何度も聴き返したくなるような

佳曲ばかり! 好盤OKOKOK

 

そして、このアルバムの二曲目の"Private Investigations"という曲ですが、帝国や

欧州ではシングルカットされ大ヒット! 日本ではシングル販売はなかったですが、

邦題が何と!「哀しみのダイアリー」! どうしても「悲しき」か「哀しみの」を

付けたいんでしょうかね。

マーク・ノップラーの作品を聴いてて、大英帝国はスコットランド出身で同じような生き様のプレーヤーが想い浮かぶんですよね。 未だブログネタにしていませんが、

永遠の吟遊詩人、Al Stewert !!! まだまだ現役の彼の作品も素晴らしいですよ♪

 

それから余談ながら、このアルバムをリリース後、前投稿で紹介したカントリー界の

寵児、あのヴィンス・ギルをバンドに誘ったという話があります。 もし、例え

短期間でもそれが実現していたなら、どんな作品を残してくれたのか? いや、もう想像しただけでも・・・! 今からでも構わないのでやって欲しいですよね♪

 

さて、1985年! 遂にその時がやって来ます! いや、バンド的にはデビュー以来、

着実に成功の道を歩んで来たので、久々の快挙という訳ではないですが、この作品、

全世界で3,000万枚以上売れてしまいます! 大英帝国だけで見ても、歴代7位の

アルバムセールスを記録。 因みに、1位は女王様のベストアルバム、2位が兜虫達の代表作、6位は自称KOPのあれだそうです。 せめて←こいつだけは抜いて置こうね!

"Brothers In Arm" !!!  スタジオ盤5作目にして全米でも大ブレーク! 

 

このアルバムからは数々のヒットシングルも生まれましたが、話題性で言うならば

先ずはこの曲!  オリジナルPVです♪

"Money For Nothing" !!! マークとボーカルで参加しているスティングとの

共作のこの曲、ロック音楽をチープな娯楽産品へと格下げした忌まわしきMTVに

対する不満を仄めかした内容なのですが、皮肉にもそのMTVで繰り返し流される

PVのお陰で大ヒットしてしまうと言う結果に! 

 

80年代半ばというと、大英帝国のミュージシャン達がこぞってアメリカ大陸に侵攻、

多くの者が成功を収めましたが、そもそもビートルズが世に現れた頃を考えると、

彼らにしても最初はチャック・ベリーやリトル・リチャードなんかに憧れてカバーを

やっていたのが、次第に大英帝国らしいオリジナリティを発揮し、それが全世界に

旋風を巻き起こしたというパターン。 その繰り返しで、大英帝国のバンドにとってアメリカ大陸巡礼はいつか通る道。 ただ、そこで迎合して駄目になるか、U2や

ジェネシスとそのメンバー達、そしてこのダイアー・ストレイツの如く、例え成功を

収めようとも、自分達のアイデンティティを見失わず、息長く活躍を続ける人達も

いるということなのでしょう。 

 

ではもう一曲! このアルバムのオープニングナンバーの”So Far Away" !  確かに

大陸的なゆったりした乾いたサウンドですが、こういう曲こそ彼らの真骨頂!!!

良い曲ですね♪

 

その後バンドは88年に一旦解散。 91年に再結成し、アルバムもリリースしますが、マークはその後ソロとして活躍。 割愛しますが、素晴らしい作品を連発します!

 

とまあ、これほどの成功を収めたバンドなのですが、日本ではヒットしたデビュー作以降、勿論、コアなファン的にはずっと追い続けた訳ですが、果たして一般的には

どうでしょうか? いや、ファンを自認する人でさえ、あのデビュー曲を超える程の

インパクトある作品が出ないとして、離れて行った人も多かったのでは? 83年に

一度来日しただけということもあるのでしょうが、世界的に成功したバンドという

ことではなく、シーンの動向には全く目もくれず、デビュー後も自分達が信条とする音楽だけを素晴らしい作品として作り続けたにも関わらず、その高い評価と成功に

反比例するように忘れられて行ったというのは、やはり、あの曲のタイトルなのか!

悲しきサルタン」の大ヒットの印象が強烈が故に、ヒット曲狙いの一発屋みたいな

イメージが何となく付き纏い、「ああ、あの「悲しき・・・」のバンドね」位にしか

記憶されて来なかったとすれば何たる悲劇! 

 

80年代以降、自称KOPの出現とMTVのお陰で、良い音楽としてのロックと、売れる

娯楽商品としてのロックと別れてしまったんでしょうね。 そして、一般論的には

日本市場には後者の方の情報のみが(未だに)溢れかえっているという惨状! 

大手ではキングレコード位じゃないですかね、その当時決して売れた訳でもない

知られざる名盤を、ファンの声に応えて再発を繰り返しているのは。

 

渋いコーヒー片手に、たまにはこんなバンドと向き合って見るのは如何でしょう♪