「風の市」
1960年代の後半。
大阪の片隅の、ずっと片隅の生野区の、そのまた片隅の田島二丁目に
突然現れた
軍事政権の韓国からの密入国者。
故郷を知らない若き兄弟の元に
突然やってきたその男は
流暢な日本語で兄弟と、小さな町を混乱させる。
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幼い頃に
ある日突然
韓国から密入国者が現れては
ある日突然
消える事が多かった。
生きれない故郷から
生きれない異国に来て
生きれない国家に送り返される。
国家が圧力で隠した故郷での虐殺なんて
誰も知らなかった時代。
アボジは当時を振り返る時に言う。
「あの時、ここに来た彼らは、みんな沈黙してたんや」