サルバトール・ムンディの正体 | レオナルド・ダ・ヴィンチの小部屋~最後の晩餐にご招待

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レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の謎解き・解釈ブログです。
2021年5月末から再度見直して連載更新中です。

 
レオナルド・ダ・ヴィンチの幻の絵画「サルバトール・ムンディ(救世主)」がNYで発見されてて、11月にはロンドンのナショナルギャラリーで展示されるとのこと。
 
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なんと!2億ドル(約160億円)の価値だそうです。
 
2年前にフジテレビが「ラロックの聖母」という絵を発見したとかで、これぞレオナルド・ダ・ヴィンチの作品だ!本物なら600億円はくだらない、などと話題を集めてお台場合衆国で展示までして、その後2年間フジテレビは「ラロックの聖母」に関して何の追跡番組もしない。あれはいかにも眉唾ものだった。
 
しかし今回の「サルバトール・ムンディ」に関しては、レオナルド・ダ・ヴィンチ作だと信じられます。
 
別のニュースによれば、描かれた時期は、モナリザとほぼ同時期の1490年代後半から1500年頃と推定とのこと。ダ・ヴィンチ・コードもありです。
 
レオナルド・ダ・ヴィンチの絵を解くにあたって重要視しているポイントは以下の3つです。
①人物の視線
②人物のポーズ、特に手の動き
③弟子や他の画家の絵との比較
 
 

今回の『サルバトール・ムンディ』ですが、3つのポイントでみてみましょう。

イメージ 2①人物の視線
 まっすぐにこちらに視線をむけており、絵を見る者に何かを語りかけているようです。
 
②人物のポーズ、特に手の動き
 ダ・ヴィンチがよく用いる、天を指す人差し指は1本指です。
 こちらは、2本指ですね。
 天を指す人差し指とは全く異なるものであり、これは「祝福」を与えるポーズです。
 
左手に水晶玉を持っています。
この絵を解く鍵は、この水晶玉しかないでしょう。 
 
 
 
 
 
③弟子や他の画家の絵との比較
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ヴィットーレカルパッチョ Vittore Carpaccio  1480-1490頃の作品と推定 イタリア
『Redentore benedicente tra quattro apostoli 』
                   https://it.wikipedia.org/wiki/Redentore_benedicente_tra_quattro_apostoli
 
タイトルはちがいますが、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵とポーズがそっくりですね。
ただ、カルパッチョの絵は、手にしているのは球体であっても、透明な水晶ではないです。
球体の上には十字架がついています。
さらにイエスの周りには、マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの4人の福音記者が描かれています。
(新約聖書の中でイエスの生涯を記しているのは、マタイによる福音書・マルコによる福音書・ルカによる福音書・ヨハネによる福音書という4つの福音書だけです。彼ら4人は福音記者とも言います。)
 
イメージ 4左の絵は、参考絵画です。
マタイ・マルコ・ユカ・ヨハネの4人の福音記者はキリスト教美術において、
マタイ=人(天使)、ヨハネ=鷲、
マルコ=獅子、ルカ=雄牛、
と象徴的に描かれることがあります。
 
人(天使)、鷲、獅子、雄牛は、新約聖書内のヨハネの黙示録の第4章6-8節に登場する生き物です。
 
4人の福音記者が一緒に描かれる時は、
4つの福音書を想起するとともに、ヨハネの黙示録を想起するものでもあるのです。
 
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レオナルド・ダ・ヴィンチとの絵と並べてみましょう。
服装もちがうけど、大きな違いは4人の福音記者がいるのと、持っている球体が異なること。球体は世界を表現しているようにみえます。
 
次に「水晶」が、聖書の中でどこに出てくるか調べてみましょう。
 
●以下で旧約・新約の聖書の言葉を検索することができます。
【訳名選択】は、新共同訳でも口語訳でもどちらでもいいです。
【検索キーワード】で、 水晶 と入力して、 すぐ下の 「送信する」で、 
「水晶」にヒットする記述が5つ、出ます。
 
 
 
出エジプト記・ヨブ記・哀歌・エゼキエル書というのは、旧約聖書で、イエスが誕生する以前の話であるので除外します。
 
新約聖書でヒットしたのは、残る「ヨハネの黙示録」だけ。
4つの福音書には水晶はヒットしませんでした。
 
ただしヨハネの黙示録は、十字架にかかったイエスは登場しません。
ヨハネの黙示録は預言書的な書であり、イエスは登場しないのですが、イエスの再臨を暗示させているものです。ヨハネの黙示録の中に登場する、『小羊』または『鉄のつえをもってすべての国民を治めるべき者』が、それにあたります。
 
ヒットした文章をもう少し詳しくみてみましょう。
 
 
「水晶」でヒットしたヨハネの黙示録のうち、1番目の4章6-7節 
『また、玉座の前は、水晶に似たガラスの海のようであった。この玉座の中央とその周りに四つの生き物がいたが、前にも後ろにも一面に目があった。
第一の生き物は獅子のようであり、第二の生き物は若い雄牛のようで、第三の生き物は人間のような顔を持ち、第四の生き物は空を飛ぶのようであった。』 
 
2番目のヒットは、紫水晶なので、外します。
 
3番目のヒット、22章の1-2節
『天使はまた、神と小羊の玉座から流れ出て、水晶のように輝く命の水の川をわたしに見せた。川は、都の大通りの中央を流れ、その両岸には命の木があって、年に十二回実を結び、毎月実をみのらせる。そして、その木の葉は諸国の民の病を治す。 』
 
水晶というキーワードから導き出されたのは、ヨハネの黙示録
その中でも、玉座・命の水といったイエスに関わる単語にかかっています。
また、4つの生き物もいますね。
 
これらから推察するに、
レオナルド・ダ・ヴィンチの『サルバトール・ムンディ』は、単なるイエス・キリストではなく、
ヨハネの黙示録で『小羊』又は『鉄のつえをもってすべての国民を治めるべき者』と表現されている
復活・再臨のイエスを描いたものとの結論です。
 
 
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「ここに上ってきなさい。
そうしたら、これから後に
起こるべきことを見せてあげよう。」
 (ヨハネ黙示録4章1節口語訳より抜粋)
 

 「目は魂の窓である」
レオナルド・ダ・ヴィンチの名言より