あの女の部屋を見に行った。
発覚した年の秋だったと思う。
2年半くらい前かな。
会いに行ったわけでなく、
ただどんな所に住んでいるのか見たかった。
LINEの履歴で知った夫の行動では、
熱が出て休んだあの女に、
薬やゼリー、スポーツドリンクを届けていた。
ドアノブに引っ掛けておいたよ。
その言葉から、見てもいないドアノブに掛かっていたであろう差し入れを、何度も想像していた。
同じ日ではなくても、
体調の悪い私を放ったらかしで、
あの女と一緒にいた事実が辛くて、
それを知らずに、
帰ってこない事が当たり前だと思っていた事が悲しくて、
何度も想像のドアノブに掛かった差し入れに嫉妬していた。
本当にここに住んでいるの?
何度もナビで確認して、建物の名前も確認した。
40歳まで働いて独身で、
初めての一人暮らしと聞いてきた。
なんで、ここに住んでいるんだろう?
学生だった頃の私でも、選ばない。
同じ造りでも、もう少し新しい所にする。
ドアの前まで行ってみた。
絶対いない時間だったけど、ドキドキした。
階段は日の当たらない所に苔があった。
表札もない、ドアの郵便受けには錆びがあって、ドアホンは鳴るのかな?
本当に住んでいるんだろうか?
夫は部屋に入った事は無いと言っていた。
なんか、あの部屋怖そうじゃん。
嘘ばかりだけど、これは本当だろうなぁ思った。
嘘の中の本当を見つけると安堵していた。
まだ、私の心が悲鳴をあげていた時の事。
昨日、久しぶりにドアノブに掛かった差し入れの情景が浮かんだ。
私が風邪気味だったから。
夫は予定を変更して、一緒に布団に包まっていた。
人の温もりを感じながら、
何度も想像して、あんなに苦しかった情景が、違った角度で見えた。
古びたドアノブに掛かっている
薬局のビニール袋が、
寒々とした風でガサガサと、
人気ない廊下で揺れている。
色あせた情景。
あの女は本当に自分を大事にしてないんだなぁ。
夫も、どうでもよい女を利用したんだなぁ。
不倫なんて、所詮こんなもんなんだなぁ。
自分を大切にする。
ずっとしっくりこなかった言葉。
染み込んできている。
私は私を粗末に扱わない!!