時をかける外務ゆうメイト芸人「マッチ一本火事の元」2013

 俺は人間やじろべえ。郵便局非常勤職員として、自転車で郵便配達の仕事に従事する外務ゆうメイトだ。しかし、他にも色々な顔を持つ。アマチュアのピン芸人「マッチ一本火事の元」として過去に大道芸人の整地「井の頭公園」にて顔面紙芝居で人気のピカさんが主催する「井の頭米粒劇場」に出演したり、新宿無料ライブに出演していたことがあり、R-1には現在でも毎年出場している。藤子不二雄ファンサークル「ネオユートピア」の会員だった。友人と「バケラッタ」というコンビ名でM-1にも出場したことが或る。そして、何と・・・・・

タイムリープ能力者なのだ。

 俺はタイムリープという能力を使える為に、自分の都合の良いように過去を替えることが出来る。だから、ネタが滑っても、滑ったという事実を消去してしまうことができるのだ。何い、とんでもない野郎だって?タイムリープは身体張るんだよう。所詮、俺は只のアマチュアなのに。


2013.2.25(月)
 俺は入江直亭、30歳。直亨と書いてナオユキと読む。専門学校を出て配属11年目を迎える郵便局員。通称はナオテーだ。さて午前中の配達を終えた昼休み。俺はいつもの如く、食堂に向かう。普段は月曜が非番の人間やじろべえだが(人間やじろべえが所属する班の)小早川君が退職した影響で、人間やじろべえら外務ゆうメイトは隔週で非番出勤していて、本日は人間やじろべえが出勤の日だったな。それにしても、あの人間やじろべえにあんなスクープが手に入るとは夢にも思わなかったぜい!

ナオテー「おい!人間やじろべえ」
人間やじろべえが振り向く。
ナオテー。人間やじろべえをからかうような笑顔で何も話そうとしない。
人間やじろべえ「お前どうしたんだ?ニヤニヤして。キモいぞ」
ナオテー「お前、昨日友梨ちゃんとパンケーキ食べに行ってただろ」
人間やじろべえ「(赤面しながら)な、何故そのことを」
ナオテー「女の子の情報なら俺に聴け」
人間やじろべえ「質問の答えになってねーぞ」
ナオテー「友梨ちゃんのツイッターを拝見していて何となくな」
人間やじろべえ「でも俺の名前は書いてなかったし、彼女が高校生の頃に俺が告白してフラれたとも書いてなかっただろうが」
ナオテー「甘いな。人間やじろべえ」
人間やじろべえ「・・・・・」
ナオテー「高校生の頃の冬休みにバイトしていた場所でお世話になった人とパンケーキを食べてますと書いていて、他に友梨ちゃんと食べに行く輩が思いつくか」
人間やじろべえ「(反論出来ない)」
ナオテー「何があったのか聴かせろよ」

 当日、弟と新宿ピカデリーで映画鑑賞後アニメイトに立ち寄った後で駅で(現在は大学を出て就職した)早川友梨ちゃんと出会う。ここで弟と別れて二人で歩いてたら、

友梨「人間やじろべえさん。パンケーキ食べに行きませんか?」

 と声を掛けられ、自分自身、甘いものが好きだったことも或るが、最近、女の子の間でブームになってると聞いていたので興味本位で彼女と一緒に店に並んだってのが真相だったりする。黙々とパンケーキを食べていたのだが、友梨が突然「クスッ」と微笑んでいたので、人間やじろべえが怪訝そうに声を掛けた。

人間やじろべえ「どうしたの?」
友梨「人間やじろべえさん。本当に美味しそうに食べますね」
人間やじろべえ「何気によく言われるんだ」
友梨「そういえば来週3日の雛祭りはリヒト姉さんと高畑魔美ちゃんの誕生日でしたね」
人間やじろべえ「そうだね」
友梨「星屑ロンリネス再結成するんですか?」
人間やじろべえ「嗚呼!ナオテーが唐沢さんも招待するってさ」
友梨「でも、昨年ドッキリに引っかかってるだけに、二度は繰り返せないと思いますけど」
人間やじろべえ「ナオテーがMCテクで誘導するって」
友梨「(微笑みながら)フフッ、楽しみにしてます」

 やがてパンケーキを食べ終わった二人。人間やじろべえは友梨の前では「惚れた女の子の前では格好つけたい男の悲しい性」から奢ろうとするが、友梨は断った。

友梨「誘ったのは私ですし。・・・・・それに」
人間やじろべえ「それに?」
友梨「人間やじろべえさん。お笑いの夢を追ってたフリーターじゃーないですか」
人間やじろべえ「(痛いところを突かれて反論出来ない)」

 駅に向かう二人。しばらく沈黙が続いていたが、又しても友梨から声を掛けてきた。

友梨「人間やじろべえさん」
人間やじろべえ「何?」
友梨「『君に届け』の新刊(18巻)購読しました?」
人間やじろべえが頷く。
友梨「出会った当時は多感期だったこともあって、リアルタイムに影響を受けてきたけど、爽子と風早君のカップリングが成立して、私自身が社会人になった現在でも購読し続けてしまいますね」
人間やじろべえ「そうだね」
友梨「(微笑みながら)「そうだね」って人間やじろべえさんは私より10歳近い年上の男性じゃーないですか」
人間やじろべえ「君が高校生の頃に紹介されて愛読しだしたのがきっかけだったからね」
友梨「そういえば、お互いに奥華子さんのファンでもあって」
人間やじろべえ「お互い、不器用な性格だからね」
友梨「男の人で奥華子さんの歌で共感してくれる人と語り合えるのは楽しかったですし、嬉しかったです」
人間やじろべえ「「愛されていたい」や「楔」などインディーズ時代の歌も良いよね」
友梨「でも社会人になった現在でも奥華子さんの歌や『君に届け』のような作品に感情移入してしまう自分ってメンタル的に成長出来てないのかな?って不安になります」
人間やじろべえ「そっちの方が女の子は可愛いよ」
友梨「私、エッコとトモのコンビみたいなおとなしいグループに所属していたので、爽子ほど極端では無かったので友達は常にいて仲も良かったのですが、本音でぶつかり合える訳でもなければ、過激派グループに苦手意識も感じてた女の子でした」
人間やじろべえ「そういえば『君に届け』を紹介されてた頃も同じことを言ってたね」
友梨「でも、だからこそ影響を受けた女の子として成長したい自分もいるんですよ」
人間やじろべえ「藤子不二雄作品の「あすなろ精神」に相通じるものを感じるね」
友梨「(微笑みながら)結局は藤子作品で喩えたくなるんですね」
人間やじろべえ「まあね。だけどね」
友梨「だけど?」
人間やじろべえ「『君に届け』だったら女子中高生と対等に話せるよ」
友梨「(微笑みながら)そんな発言してる段階で「おじさん」以外の何者でも無いですよ」


 昼休みの食堂に戻る
人間やじろべえ「ってな訳があったんだ」
ナオテー「テメー、惚気てんじゃーねーよ!」
人間やじろべえ「惚気るなってお前から「聴かせろよ」と言ってきたんだろうが」
ナオテー「そういえば、友梨ちゃん『おおかみこどもの雨と雪』で泣いたそうだぞ」
人間やじろべえ「あっ、それだったら『おおかみこどもの雨と雪』も語り合いたかったな」
ナオテー「だけど、お前の話を聞いてるとさー」
人間やじろべえ「何か疑問でもあるのかよ」
ナオテー「友梨ちゃんから声を掛けてるけど、必ず彼女は聞き役に徹してるよな」
人間やじろべえ「(痛いところを突かれて反論出来ない)」
ナオテー「惚れた女の子に気を遣わせてるんじゃーねーよ!」
人間やじろべえ「何を言ってやがる。ナオテー」
ナオテー「おっ、反論出来るのか?お前」
人間やじろべえ「俺は彼女と歩幅を合わせて歩いたし、もしも彼女が荷物を持ってたら、俺が持ってやったぞう」
ナオテー「そんな言い訳してる段階で無様な姿を晒してるぞ」
人間やじろべえが人間やじろべえを披露する。
ナオテー「自爆したからって、自分のセールスポイントで誤魔化すな」

 

 誕生日編へと続く。