ご訪問くださり、本当にありがとうございます。


霊や生命について書かれています。


ですから、興味がわかなかったり、読んでいて不愉快になられるのなら、迷わずにスルーされて下さいね。


あなたの大切なお時間を無駄にしたくありません。

 

 

所要時間=10~12分程 です。

ご関心があればお時間のある時にでも、ゆっくりとお読みになられて下さい。

 

 

 

 

日本のスピリチュアリズム(Spiritualism)の父とも言われる、浅野和三郎(あさの わさぶろう)氏が、

 

妻の多慶子さんを霊媒として、他界した次男の新樹さんから受け取った数々の霊界通信をもとに、

 

心霊科学研究会より昭和6年~昭和11年にかけて3冊にわたって編集・出版され、

 

昭和24年に一冊に纏められた著述の、下記復刻版より抜粋・編集しています。

 

本文復刻版・霊界通信『新樹の通信』 (潮文社)

 

原著の旧漢字は改められるだけ新漢字に変更しております。

(一部、私にて当てた漢字もあります)

 

 

 

 

 

 
 
 
 

 

 

 

 

(上記の続きです)

 

 

《  》 内は私が追記しました。

原著の体裁を変更しています。

 

 

 

新樹の通信
 

 

ある日の龍宮

その1

 

 

 

昭和六年の秋には、満州事変が突発したため、幽明交通の機関も、ある程度そちらの方面に向けられましたが、しかし私《=浅野和三郎氏》の主たる研究題目は龍宮界であって、新樹は、彼の母の守護霊《=小櫻姫》と共に、絶えずその仕事に使われました。

初めての龍宮行は、九月二十二日の午後に行なわれました。

新樹はその時の模様を、かく通信して来ております。



<新樹>


今日は突然お母さんの守護霊さんから通信がありまして、これからあなたも私と一緒に、龍宮界へ出掛けるのです。

いろいろあちらで査べることがある、と殆んど命令的の口吻(こうふん)なのです。

僕、その権幕にいささかびっくりして、どうした訳で、急にそんな話が持ち上ったのかと訊いてみますと、守護霊さんの仰しゃるには、これはあなたのお父さまからの御依頼です。

龍宮というところは、いかに書物で査べても、他(ひと)に尋ねてもどうしても腑に落ちない箇所が多くて困るから、是非子供を連れて行って、詳しく査べさせてくれとの御注文で、それで急に思い立ったのだ、という御返答なのです。

僕、龍宮なんて、実際そんな境地(ところ)が、果してあるか無いかも知らないくらいで、一向自信がありませんでしたが、守護霊さんがえらい意気込みなので、僕おとなしく付いて行くことにしました。

間もなく守護霊さんは、僕の住居へ誘いに来てくれました。

いつもの通り、足利時代の道中姿で、草履を穿いておられます。

僕は例によって洋服だ・・・龍宮行きだからとて、洋服を着て行って可けないという理由も、別になかりそうに考えたからです。

それにしても、龍宮探検とは随分振っていると、僕いろいろ考えました。

龍宮はいったい海の底の世界なのかしら・・・。

子供の時分に読んだお伽噺には、確かにそう書いてあったと思うが、もし海底だとすれば、どんな塩梅式にそこへ潜り込むのかしら・・・。

こいつぁ少々薄気味わるくもあるが、同時にまた面白い仕事でもある・・・。

事によると、大きな海亀が自分達を迎えに来るかもしれない・・・。

僕、思案に余って、とうとう守護霊さんに龍宮はどんな所かと伺いを立てると、守護霊さんは軽くお笑いになって、あなたはいろいろの事を想像していられるが、黙って付いてお出でなさい。

行ってみれば、どんな境地(ところ)かすぐ判ります。

と言って、一向詳しい説明をしてくださらない。

僕の好奇心は自然最高潮に達した訳です。

先方についてからの見聞記は、僕よりも守護霊さんの方が詳しいかと思いますから、成るべく守護霊さんを呼び出して、一度その物語をきいてください。

足りないところがあったら、僕が後で補充することにしましょう。




せっかく新樹がそういうものですから、私は妻の守護霊を呼び出すことにしました。

守護霊はいつもより気乗りのした調子で。

元気よく私の問いに答えるのでした。



《以下、浅野氏による質問と小櫻姫からの回答》


<問>
今日はいろいろ御骨折でした。

今ちょっと子供からお出掛けの様子だけききましたが、子供も龍宮には大分面喰った模様ですね。

<答>
はい、大変に可笑しうございました。

子供は、龍宮の話は幼い時分にお伽噺できいたり、また歌唱でも習ったりしたが、いったい本当にそんな境地(ところ)があるのかしら。

よもや亀が迎えに来るのではあるまいなど、いろいろの空想を起して気を揉むのでございます。

余りおかしうございますから、わざと説明せずに少しじらしてやりました。

地上の人は、龍宮を海の底だと考えていますが、実はそうではございません。

龍神さまは海にも、陸にも、ここにでもおられます。

龍神さまと海との間に、特別の関係なんか少しもございません。

龍宮とはつまり龍神様のお宮殿(みや)のある世界という事でございます。


<問>
いったい、龍神の本体は何なのですか?

<答>
さきへ行ってお査べになれば、追い々々お判りになりますが、龍神様はつまり神様・・・元の生神(いきがみ)さまで、一度も人間のように肉体をもって、地上にお現われになられたことの無い方々でございます。

で、そのお姿なども自由自在でございます。

私が拝みますと、その御本体はやはりわれわれ同様、白い丸い美しい球でございますが、何かの場合に、力強いお働きをなされます時は、いつもあの逞しいお姿・・・あの絵にあるような龍体をお現わしになられます。

それから、私どもが龍宮へ参ってお目にかかる場合などには、またその御姿が異います。

御承知の通り、あの神々しい理想のお姿・・・それはそれは御立派でございます。


<問>
すると龍神さんは変化(へんげ)る名人で、到底われわれ人間には歯ぶしが立ちませんね。

<答>
何しろ神様と人間とは、大へんに階段がちがいますからね。


<問>
すると、すべての神様は、ことごとく龍神さまと思えばよい訳でしょうか?

<答>
さあ、すべてという事は、到底私などの分際で申上げ兼ねますが、少くとも、人間受持ちの神様は、龍神さまであると考えて宜しいと存じます。


<問>
そしてその龍神さまと人間との関係は?

<答>
地上の人類は、最初は皆龍神様の御分霊を戴いて生れたように承っております。

つまり龍神さまは、人間の霊の御先祖さまなのでございましょうね。


<問>
いやだいたい見当が付いて来ました。

詳しい説明は先きへ行って伺うことにして、早速龍宮探検のお話を願いましょうか。

<答>
承知致しました。

では申し上げます。

あれから私達二人は、なにかと物語りながら、随分長い道中を致しました。

白い浄らかな砂地の大道、それがズーッと見渡す限りつづいております。

歩いても歩いても、なかなか歩き切れそうもなく感じられましたが、つまり私達の境涯と、龍宮の所在地とは、それほどまでに懸隔(へだたり)があるのでございましょう。

それでもとうとう辿り尽して、ふと彼方を見渡しますと、行方遙かに龍宮の建物が夢のように浮び出ました。

私にはさして珍らしくもございませんが、それを発見した時の子供の驚きと歓びは、大へんなものでございました。

「やあ、大きな門がある!

いくらか旅順方面にある支那《※原文のまま記載》式の門に似ているな。

やあ、内部(なか)の方には大きな建物がある!

反り返った棟、朱塗の柱廊、丸味がかった窓の恰好、こいつも幾らか支那《※原文のまま記載》趣味だ。

いや、どうも素敵だ・・・」

としきりにはしゃいでおりました。


<問>
さぞ久しぶりで、子供も気が晴々としたでしょう。

元来陽気の資質(たち)の児ですから、たまには面白い目にも逢わしてやりたいと思います。

<答>
その通りでございますとも!

それには今度の龍宮見物は、大当りでございました。

伊勢大廟の参拝などとはまた気分が異います。

伊勢は世にも尊い神様のお鎮まりになられるところで、身が引きしまるような神々しい感じに打たれますが、こちらは、立派ではあるが、何やらその、そう申しては相済みませぬが、面白い、晴々しい、親しみの深い感じが致します。


<問>
お話を伺っただけでも、ほぼその状況が察せられます。

境内もさぞ立派でしょうね。

<答>
そりゃあ立派でございます。

すいぶん広いお庭があって、そこには塵一つとどめません。

樹木は松、杉、檜その他が程よくあしらわれ、一端には澄み切った水を湛えた、大きな池もございまして、それには欄干のついた風雅な橋が架っております。

すべて純粋の日本風の庭園でもないが、さりとて支那《※原文のまま記載》風でも、また西洋風でもない。

やはり一種独特の龍宮風でございます。

大きな、面白い恰好の巌岩なども、あちこちにあしらわれてあります。

裏の方は、こんもりと茂った山に包まれて、なかなか奥深く見えます。

が、概して神社と申すよりかも、むしろ御殿・・・御住居と言ったような趣が漲っております。

で、子供もたいへんに陽気になりまして、生前かねてうわさにきいていた龍宮の乙姫様に、早く会わしてくれと申します。

私も今日は是非、乙姫さまにお目通りを願いたいと思いました・・・。


<問>
乙姫さまと申すといったいどなたの事で。

<答>
それは豊玉姫さまのことでございます。

私の方の系統の本元(ほんもと)の神さまで、そう申しては何でございますが、この方が龍宮界の一番の花形でいられます。


<問>
それで、あなた方は、その豊玉姫にお会いなされたのですか?

<答>
はい、お目通りを致しましたが、それまでには順序がございます。

先ず御案内を依む時に、子供と私との間にひと悶着起りました。

私達は正面のお玄関・・・立派な式台のところに立っていましたが、私が子供に向い、あなたは男の身で、今日の責任者だから、御案内を依むのはあなたの役目だと申しますと、子供はもじもじと尻込みをしてました。

「僕は新米だから駄目です。きまりが悪い・・・」

そんな事を申しているのです。

致し方がございませんから、私が「御免ください」と申しますと、すぐに一人の年若い侍女が取次に出てまいりました。


<問>
年若の侍女と申して、幾歳位の方です?

<答>
さあ、ざっと十六歳位でもありましょうか、

大そう品のよい娘さんで、衣装なども神さんのお召しになられるような、立派なものを着ておりました。


<問>
その取次の女だって、本体はやはり龍神なのでしょうね。

<答>
むろん龍神さんです。


<問>
昔、彦火々出見命が龍宮へ行かれた時にも、一人の婢が出て来たように古事記に書いてありますが、やはり同一人物ではないでしょうか?

<答>
さあそれは何とも判り兼ねます。

事によったら同じ方かも知れません。

とにかく私から早速来意を申しました。

「私達はかくかく申すもので、この子の父親からの依頼により、今日はわざわざ龍宮探検に参りました。

お差支えがなければ、何卒乙姫様にお目通りを許されたい、とそうお取次をお依みします。

その辺の呼吸は、少しも人間の世界でやるのと相違はございません。

婢は一礼して引込みましたが、間もなくまた姿を現わして

「乙姫さまには、その事をつとうにご存知でいらせられます。どうぞお上りくださいませ」

と申します。

で、私は草履、また子供は靴を脱いで、式台にのぼ上り、導かれるままに、長い廊下をいくつもいくつもクネクネ廻って、奥殿深く進みました。

途中子供は小声で私に向かい、

「僕は生前一度も宮中などへ招かれたことはなく、他(ひと)の風評(うわさ)をきいて羨ましく思っていたものです。

しかし龍宮の御殿へ招ばれたのは、世界中で恐らく僕一人でしょう。

そう思うと僕は鼻が高いです」

そんな事を申して歓んでおりました。

よほど子供は身にしみてうれしかった事と見えます。


《質疑応答は以上》



「それからどうしました?」と私もつい急き込んで尋ねました。

私から催促されて、守護霊は例のくだけた調子で、早速その先きを物語りましたが、それは相当現実味を帯び、幾分人を首肯(うなず)かせる点もないではないが、さてその片言隻語のうちに、何やら人間離れのした、なにやら夢幻劇的色彩らしいものが、多量に加味されているのでした。

取扱う事柄が事柄なので、こればかりはどうあっても免れない性質のものかも知れません。

取次の婢によりて、二人がやがて案内されたのは、華麗を極めた一つの広間なのでした。

例によりてそれは日本式であると同時に、また支那《※原文のまま記載》式でもあり、そのくせ、どこやら地上一切の様式を超越した、一種特有の龍宮式なのでした。

眼の覚めるような丹塗(にぬり)の高欄、曲線美に富んだ園窓、模様入りの絨氈(じゅうせん)、そこへ美しい卓子だの、椅子だのが程よくあしらわれて、何ともいえぬ朗らかな感じを漂わしている。

上の格天井がまた素晴らしく美事なもので、その中央の大きな桝形には、羽翼(はね)の生えた、風がわりの金龍が浮き彫りにされている・・・。

室内にはいろいろの装飾品も置いてありました。

先ず目立って見えるのは卓上の花瓶、それに活けてある大輪の白い花は、椿のようであって、しかも椿ではなく、えも言われぬ高い香が、馥郁(ふくいく)として四辺(あたり)をこめる。

床間らしい所には、美しい女神の姿を描いた掛軸がかかっていて、その前に直径五、六寸の水晶の球をあしらった、天然石の置物が置いてある。

二人が与えられたる椅子に腰をおろして待つ間ほどなく、ふと気がついて見ると、いつの間にやら乙姫様は、もうちゃんと室内にお現われになっておられるのでした。

妻の守護霊は、その時の状況をこう述べるのでした。




<小櫻姫>

あの時はまことに意外でございました。

乙姫様は、当り前に扉を開けて、そこからお出ましになられたのでなく、こちらが気の付かない中に、スーッと風のように、いつの間にやら、われわれの頂戴した卓子から少し離れた、上座の小さい卓子にお座りになっておられたのです。

で、私達は急いで椅子を離れて御挨拶を申上げました。

乙姫様は申すまでもなく、龍体をお有(も)ちの方でございますが、この場合龍体では勝手が悪うございますので、いつもの通り、とてもおきれいなお姫様のお姿でお会いくださいました。

そのおきれいさは普通(ただ)の人間のきれいさとは異います。

何と申してよいやら、すべてがすっきりと垢抜けがしており、すべてが神々しく、犯し難き品位を具えておられます。

目、鼻、口元と一つ一つお拾いすれば、別にこれぞというのではございません。

全体としてとてもお立派で、人間の世界には、恐らくあれ程の御縹緻(きりょう)の方は見当らないかと存じますね。

体格もお見事で、従ってその御服装が一段と引き立って見えます。

下着は薄桃色、その上に白い透き通った、紗のようなものを羽織っておられますので、その配合が何とも言えぬほど美しゅうございます。

お腰には白い紐のようなものを巻きつけ、それを前面で結んで、無雑作に下げておられます。

すべてが至極単純で、他に何の飾気もない。

それでいて、何とも言えずおきれいなのでございます。

御年輩(おとし)は、左様でございますね、やっと三十になるかならずというところでございましょうか。

もちろん娘さんという風ではなく、奥様らしい落着きが、自然に備わっておいででございます・・・。





それから来訪の二人は、早速乙姫様に向い、私《=浅野和三郎氏》の代理として短刀直入的に、いろいろの事を質問したのでしたが、乙姫さまは絶えずにこやかに、人間らしい親しみをもちて、気軽くそれ等を受け流されました。

成るべくありのままに、その時の問答を写し出してみましょう。

 

 

 

 

「新樹の通信(23-1)」へ続きます。

 

 

 

 

ここまでお読み下さり、本当にありがとうございました