こんばんは。曽爾村民です。今日は、また小説の紹介をしたいと思います。
今日紹介する本は、浅倉卓弥さん著『追憶の雨の日々』(出版社:宝島社 発行年月:2009年8月)です。
生きがいも目標もなく無為に生きる主人公の男性が、運命的に再会した同級生と一緒に暮らした日々の話です。
雨の音と胸に落ちる涙の音が、最後のページまで、ずっと耳の奥に静かに続いているような、そんな小説でした。
もう最初から別れに向かって走っています。
終わりを感じさせながら、ゆるやかな日常が淡々と綴られていく。
影のなさが逆に怖いと思いました。
隣に住む家族が主人公と対照的な存在として描かれていたのが印象的です。
別にたいした事件も起こらないし、男女が出会って別れるただそれだけの話。
それが恋が終わったら何も残らなかったという妙なリアリティを後押ししている。
主人公の未来は前進しているのに、まったく幸せに感じないこの寒さ。
この小説で特に印象に残るのは、赤い傘、包丁で野菜を刻む音、2人の間に流れる心地よい音楽でした。
そして喪失感、やるせなさ、切なさという様々な感情が読後を待ち受けています。
上記にあげたような背負い込む感情だけでなく、そこにはほこほこと暖かい感情も同時に湧いてきました。
作品の中に散りばめられたいくつもの素敵な例えも漏らさずチェックしていただきたい良作でした。